下北沢の再開発は本当に正しかったのか? 新しい街が完成して1年半、今こそ「ノスタルジー」「思い出補正」を超えた議論が必要だ
2022年5月下旬に旧線路跡地を利用した大型開発「下北線路街」が完成してから1年半の年月が過ぎた。再開発は本当に正解だったのか。
再開発が生み出した「負の面」

下北沢の魅力が高まり、かつ人が集まるようになったのは、小田急電鉄のまちづくり事業の成功によるところが大きいといえよう。しかしながら、線路がなくなって新しい街が生まれた結果、ただ人が増えただけで雑多な雰囲気がなくなったという声が多い。
それは、ランドマーク的な南口は混雑を極め、かつ線路で分断され不自由だったところが、下北沢の下北沢たるゆえんだったのではないだろうか。ひっきりなしに鳴り響く
・駅ホームの放送
・発車合図
・電車のブレーキ音や加速音
も雑多な街の構成要素だったに違いない。雑多な街の構成要素を失った下北沢は、もはや
「かつての下北沢でない」
ともいえる。また、成功したがゆえに、街全体として多様性が淘汰(とうた)される可能性がある。
下北沢が生まれ変わることで人が集まるようになった結果、地価や賃料が上昇する傾向にある。そうなると、経営体力のない個人商店は出て行かざるを得なくなり、資金力のあるいわゆる大手しか出店できなくなる。その結果、どこにでもあるような
「見慣れた店舗があふれる街」
になってしまうのだ。確かに下北沢で、どこでも見かけるような店舗が並ぶ光景は、残念といえなくもない。
このほか、ガールズバーなどの客引きが以前より増えたとの声もあるが、新たな客層が街に来るようになったことも起因しているのかもしれない。夜のお店の客引きは、大阪もかなりひどかったが、迷惑防止条例の制定でかなり静かになった経緯がある。その部分については、東京都や世田谷区の対応に期待したい。