物流危機どうなる “悪者”扱いされる水屋、政府の「多重下請け構造の是正」は現実的なのか?
政府は、物流クライシス対策のひとつとして、「トラック輸送ビジネスにおける多重下請け構造を是正する」という。では悪者扱いされ、是正される側となる貨物利用運送事業者は、この流れをどう考えているのだろうか。
現実的でない価格帯の仕事拒否

今回、実はインタビューに先んじて、西部運輸東京営業所の事務所で数時間、仕事を見学させてもらった。
いわゆる水屋というと、同時に数本の電話を受けながら、まるで市場の競りのように運送案件をマッチングしていく様子を思い浮かべる業界関係者もいるだろう。だが、伊藤氏らの仕事は違った。まず、実運送を担っているトラックドライバーと密に連絡を取っている。軒先条件(配達先における注意事項)を丁寧に説明する様子は、とても好感が持てた。
また、荷主や親請け物流事業者に対し、堂々と運賃交渉を行っている様子も見学していて爽快だった。
「この運賃では、引き受けるところはありませんよ。最低でも◯◯円は出してもらわないと……」
いわゆる水屋のなかには、協力会社の懐事情などお構いなく、とんでもなく安い運賃で仕事を引き受けるところもある。実際、筆者(坂田良平、物流ジャーナリスト)も、水屋から「帰り荷だから3000円でいいでしょう?」といわれ、引き受けていた運送会社を知っている。
「私どものポリシーとして、現実的でない価格帯の仕事は引き受けません」
と伊藤氏は説明する。この貨物利用運送ビジネスに対する倫理観は、大切だ。だが、こういった倫理観を持たない貨物利用運送事業者もいるのが、現実でもある。今回、多重下請け構造について取材を行っていて気になったことがある。
「そもそも政府は、多重下請け構造の何を問題にしているんですか」
このように尋ねてくる業界関係者が何人もいたのだ。つまり、多重下請け構造の存在は、なんとなく「良くないこと」と感じつつも、その具体的な課題を共有できていないということになる。