運送会社の「営業担当」はなぜ成長しないのか? 背後に古びた業界構造 新規案件つぶされ、雑用要員も――という絶望
「せっかく仕事を取ってきても現場から断られてしまう」「営業担当のはずなのに、なぜか毎日トラックに乗っている」。こんな悩みを抱える運送会社の営業担当者は少なくない。なぜ、こんなことになるのだろうか。
「営業担当者がいない!」、老舗運送会社の悩み

「営業を行わないと…」。1917(大正6)年創業の老舗物流企業、秋元運輸倉庫(東京都江東区)の取締役(当時)、鈴木清氏は悩んでいた。
同社は100年を越える社歴を持つだけあって、良い顧客に恵まれている。だが、それは未来への保証にはならない。現在の顧客との取引は、先輩たちの努力のたまものであって、厳しい言い方をすれば、今の状況は先達の功績にあぐらをかいているに過ぎないからである。
鈴木氏自身は、20~30代にかけて、自ら営業活動を行い、顧客開拓にいそしんだ経験を持つ。しかし役員である鈴木氏が、自らが営業を担うのも難しく、また後進の営業担当者が育っているわけでもない。鈴木氏の悩みは深かった。
そんな頃、鈴木氏は独立起業したばかりのフリーランスS氏と出会った。運送業界での営業経験があるS氏との出会いは、鈴木氏にとって渡りに船となった。早速鈴木氏は、S氏とともに、同業他社への営業アプローチを開始した。
結果は上々だった。
もともと業界内において、秋元運輸倉庫はそれなりの知名度があったことから、行く先々で歓待された。そして、訪問した運送会社・倉庫会社の多くが、新規案件の打診をしてくれたのだ。
「小さい案件でも申し訳ないんだけど、100坪くらい、倉庫を貸してくれないかな?」
「スポットなんだけど、毎週水曜日、名古屋まで走れる大型トラックはないだろうか?」
当時のことを振り返り、鈴木氏は、「正直、ここまで反応が良いとは思ってもいませんでした」と振り返る。
しかし…、これはぬか喜びに終わった。多くの打診を受けたにもかかわらず、ひとつも案件を成約できなかったのだ。
運送会社や倉庫会社における「営業」の大切さと、抱える課題について、解説する。