物流危機どうなる “悪者”扱いされる水屋、政府の「多重下請け構造の是正」は現実的なのか?

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政府は、物流クライシス対策のひとつとして、「トラック輸送ビジネスにおける多重下請け構造を是正する」という。では悪者扱いされ、是正される側となる貨物利用運送事業者は、この流れをどう考えているのだろうか。

運送ビジネスが産んだ必然

西部運輸東京営業所所長・伊藤研次氏(画像:坂田良平)
西部運輸東京営業所所長・伊藤研次氏(画像:坂田良平)

 なぜ、トラック輸送では多重下請けが発生してしまうのか。伊藤氏は

「まず優先されるべきは、トラックの確保(= 輸送手段の確保)です」

と説明する。

 荷主からすれば、貨物が運べないという事態は最悪だ。だから貨物輸送を依頼された側の運送会社は、懸命にツテをたどり、クルマを探そうとする。そのツテが伸び切った場合、4次請け、5次請けといった多重下請け構造を生む。

 次に伊藤氏は、貨物利用運送事業者が果たしている役目を説明する。別の側面もある。

「例えば地方の運送会社の場合、関東まで長距離で来ても、ツテがなく帰り荷(※帰路の積み荷)を探すことが難しいです。だから地方の中堅・大手運送会社は、都市圏には営業所をおいて自社で営業活動を行い確保をしているわけですが、中小運送会社では営業所を設置することは難しいです。私どもはそういった運送会社の、いわば東京営業所として代わりに帰り荷を手配する役目も担っています」(伊藤氏)

 帰り荷がなければ、当の運送会社の経営が苦しくなるばかりでなく、荷主も帰り荷がないことを前提とした割高の運賃を支払うことを強いられる。対して、帰り荷を探してくれる貨物利用運送事業者がいれば、運送会社、荷主、そして貨物利用運送事業者のそれぞれが三方よしとなるわけだ。

 このように、貨物利用運送事業者は、営業能力、対外折衝能力などが乏しい中小運送会社の経営をサポートする役割も担っている。では、荷主や親請けとなる大手物流事業者に対してはどうか。

「大手荷主や大手物流事業者ともなれば、日々手配する車両は数百台超えの規模となります。直接、中間に入る貨物利用運送事業者を排し、実運送を担うすべての運送会社と日々折衝を行うことは、現実的にはとても難しいでしょう」

端的にいえば、多重下請け構造は必要とされているからこそ生じているのだ。

(運送業界に限らず)一般論として多重下請け構造は、中小企業にとって互助組織のような役目を担っている。営業能力・対外折衝能力などが不足している中小企業同士が、お互いの得意分野を生かし、仕事を融通し合うことで、生き残っていくのだ。

 と同時に、大手企業に対し、多重下請け構造の上位に位置する企業は、ビジネスを円滑に回すためのハブとして役目を担っている。

 トラック輸送ビジネスは、従業員20人以下の運送会社が約7割を占め、逆に従業員が1000人を超える会社が0.1%(72社)しかいない、巨大な中小企業の集合体である。この運送業界において、政府が目指す多重下請け構造解消のための施策など、現実的なのだろうか。

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