「岐阜市」周辺が衰退した本当の理由 路面電車の廃止だけじゃなかった!
岐阜県唯一の百貨店である岐阜高島屋が2024年7月、閉店する。岐阜市はいわずもがな、岐阜県の県庁所在地である。そんな都市ですら百貨店が撤退するまで衰退しているのだ。
市民の路面電車への意識
また、市民も路面電車の必要性を疑問視する傾向にあった。当時、存続の実現可能性を探っていた岐阜市でも、軌道内を自動車が通行することを禁止する社会実験が行われた。その結果、定時性が回復した。しかし、市が実施したアンケートによると、市民の約32%、マイカー利用者の約36%が自動車の軌道内通行に賛成していた。また、安全島の設置については、市民の約57%、マイカー利用者の約50%が容認する意見だった。
第三セクターによる存続を求めた市の協議会でも、堀江市長は「一部の非常に意識の高い方々」は路面電車の重要性を認識しているが、「現実としては市民の方々の盛り上がりは十分ではな」いと述べている。
その後、岐阜市は岡山電気軌道に運行を委託し、上下分離方式での存続を探った。当初、岡山電気軌道はこの提案を承諾した。しかし、交渉の途中で岐阜市が安全島の設置や自動車の軌道内通行禁止に関する条件を提案したため、合意には至らなかった。これが交渉の決裂の原因であるとの見方が強い。
2004(平成16)年7月には岐阜市が存続を断念する結論を出した。さらに、フランスの大手交通会社コネックスから次世代型路面電車(LRT)を用いた事業継承案が提案されたが、バスとの一体的な運行が条件であったため、岐阜市はこれを受け入れることができなかった。
岐阜市の路面電車廃止によって明らかになったのは、岐阜市の衰退は路面電車だけが原因ではないということだった。実は、岐阜市の中心市街地の衰退と郊外化の進行は、それよりもずっと以前から始まっていた。そして、路面電車の廃止は、その衰退の一環として起こったのである。