高知・とさでん路面電車「運転士不足で減便」の非情 路線縮小か追加投資か、公共交通の持続可能性がいま問われている
路線再編の報告書提出直後に減便
とさでん交通(高知県高知市)が運転士不足で路面電車の一時減便に入った。路線再編を求める報告書が有識者から提出された直後だけに、路線の行方に影響を与えそうだ。
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「便数が減ったら、路面電車に乗る人が少なくなって路線が縮小されるかも。高齢者には大切な移動手段だから、とても心配」
高知市の中心部、南はりまや町のとさでん交通はりまや橋停留場。高知大丸の買い物袋をぶら下げた年配の主婦に路面電車の一時減便について話を聞くと、不安げな答えが返ってきた。
この主婦は市西部で暮らしている。この日は知人と市中心部で会ったあと、買い物をして帰る途中だという。運転免許がないので、移動は路面電車がほとんど。
「乗り遅れてもすぐに次の電車が来るのがとさでんの良いところ。便数を維持してほしい」
と訴えた。
減便は8月31日まで
減便は8月14日から31日までの予定。平日ダイヤを便数が少ない土日祝日ダイヤに変え、朝の通勤ラッシュに備えて市の東西を結ぶ伊野線と後免線で3便、南北を結ぶ桟橋線で2便増便した。これにより、平日の便数は1日602便から536便に減っている。
平日ダイヤの運行には99人の運転士が必要だが、慢性的な運転士不足から87人でやり繰りしていた。しかし、新型コロナウイルス感染者が相次いだことから、減便に追い込まれた。9月からは育児休業取得者らに職場復帰してもらい、平日ダイヤに戻す。とさでん交通は
「学校が再開する。人数は足りないが、対応したい」
と話した。
とさでん交通は2014年、土佐電気鉄道など鉄道、バスの3社が合併し、高知県と高知市など県内の12市町村が出資する事実上の公設民営企業として再スタートを切った。路面電車は
・高知市
・南国市
・いの町
にまたがる3線を運行し、全国で最も長い25.3kmの軌道距離を誇る。だが、コロナ禍で大打撃を受け、2020年度は
「8億円」
を超す当期純損失を出した。
沿線の大部分を占める高知市は2022年末、有識者による高知市地域公共交通あり方検討会を設置、路面電車の将来像を検討してきた。その報告書が7月末に岡崎誠也市長に提出された。報告書は
「高知市中心部は路面電車、周辺部はバスなどゾーン分けが必要」
と提言している。だが、その直後に一時減便となった。