「EV対策」急ぐ中国 日米欧部品メーカー排除の可能性も、そもそも国内で完全自給化できるのか?
中国から欧州へのEV輸出が急増している。しかし実際には、49%が中国製のテスラで、14%がBMWなど欧州と中国の合弁会社、35%がMGなど中国資本の欧州ブランド、そして純粋な中国車はわずか2%である。
半導体サプライチェーンの状況

次に半導体サプライチェーンの状況である。
半導体の集積回路(IC)の自動設計ソフトは、米国のシノプシスとケイデンス、多国籍企業のメンター3社の寡占状態で、中国はこの市場への参入に苦戦している。
前工程では、まず多結晶シリコンから高純度の単結晶シリコン基板(ウエハー)を製造する。2021年の世界市場シェアは、日本の信越化学工業とSUMCOが過半数を占める。
これらのウエハーにフォトレジストと呼ばれる感光剤を塗布し、設計したICを縮小して焼き付ける。フォトレジストは日本企業5社で9割を占め、ICの焼き付けに必要な露光機のシェアはオランダのASMLが8割、日本のニコンとキヤノンが2割のシェアを持つが、米国政府の要請で先端半導体用露光機の中国への輸出は事実上禁止されている。
後工程では、ウエハー上に作られたICチップを切り出し(ダイシング)、フレームに固定して電気的に接続(ワイヤボンディング)した後、樹脂で覆ってさまざまなテストを経て完成する。ダイシング装置は日本のディスコと東京精密がほぼ独占し、ワイヤボンディング装置は多国籍企業のASMと米国のキューリック&ソファが二分している。
自動車用半導体の中国シェアは14.8%だが、大半は外資系企業の中国工場で生産されており、中国企業は中芯国際集成電路製造(SMIC)と長江存儲科技(YMTC)の2社のみである。
このように、電池や半導体のサプライチェーンには、多くの国の材料、技術、設備が使われている。つまり、世界にとって「中国は脅威」であり、中国にとっても「世界は脅威」であり、今回の中国政府の指令はこの状況の前程なのである。