多くの女性客がトランスジェンダーの「タクシー運転手」を歓迎するだろう理由

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日の丸交通(東京都文京区)は女性、外国人、トランスジェンダーを含めたLGBTの人たちを積極的にドライバーとして採用している。そのメリットと業界を取り巻く状況とは。

トランスジェンダーの積極採用

タクシードライバーのイメージ(画像:写真AC)
タクシードライバーのイメージ(画像:写真AC)

 タクシー業界は、働き方改革により労働時間に制限が入る「2024年問題」を2024年に控えている。大幅にドライバーの採用を増やす必要があるが、平均年齢が高く、退職者が出るので採用が追い付かない。近頃は女性を採用するところも増えてきたが、まだまだ人が足りない。

 そんななか、日の丸交通(東京都文京区)は「ダイバーシティ採用」を掲げ、

・女性
・外国人
・トランスジェンダー

を含めたLGBTの人たちを積極的にドライバーとして採用している。

 LGBTのなかでも、生まれと性自認が一致した同性愛者や両性愛者などは、見た目ではわからないことも多いが、トランスジェンダーは見た目でわかる確率が高くなる。

 乗客の反応が気になる人もいると思うが、同社の採用担当者によれば、見た目と名前の性別と違いから、からかってくる乗客がいたのも事実だが、これまで大きなトラブルはないという。

「女性にしか見えない」
「きれい」
「たのしかった」

などといった乗客の反応で、ドライバーたちは、自分らしく働くことに幸せを感じているようだ。

 採用担当者も、採用となったドライバーたちの

「トークスキル」
「人との接し方における思慮深さや感性」
「人の痛みがわかる」

といった面に感銘を受けたようだ。

 トランスジェンダーのドライバーには、見た目の問題から前の会社で浮いてしまった人、水商売ではなく安定した仕事に就きたかった人などがいる。採用は、人材不足にも関わらず、思いのほか厳しく、LGBT採用として50人以上を面接した結果、入社したのはわずか5人である(2022年7月3日付『Job Rainbow Magazine』)。

 会社としては、LGBT研修の実施、性自認に沿った制服の選択、通称名の使用(改名には1年以上かかるのが一般的)、営業所によっては一部オールジェンダートイレの取り入れなどを行いながら、ダイバーシティ化を進めているところである。

 更衣室の利用については、営業所の女性従業員を全員集めて会議を話し、反対者はいたものの、他の女性たちから説得され、全員賛成となった上で共用することになった。

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