「大声で話すな」 バスドライバー不足を解消したいなら、昭和~平成の“おっかない”ドライバーを容認せよ【連載】ホンネだらけの公共交通論(9)
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人手不足のバスドライバー。彼らが安全運転に集中するためには、車内の空間的な変革も必要だ。すなわち、彼らがいいたいことをいえる雰囲気を作ることである。
昔のドライバーの振る舞い

昔、バスドライバーといえば「おっかない」というイメージがあった。
1976(昭和51)年生まれの筆者(西山敏樹、都市工学者)は、小学生の頃から路線バスに興味を持ち、よくひとりでバスに乗っていた。学生時代、1980年代から1990年代にかけては、今ほどマイクを多用し、接客に異常に気を配るドライバーはむしろ珍しかった。
筆者は東京で学生時代を過ごしたが、
・5000円札や1万円札で乗ろうとする乗客を大声で注意するドライバー
・飲み物や食べ物を持ち込む乗客を叱るドライバー
・大声で話す乗客を叱るドライバー
などをよく見かけた。自転車で坂道を登っている人に
「危ないから、こんなところを登るな」
と窓を開けて注意したドライバーも覚えている。また、前扉を開けて
「こんなところに駐車しちゃダメだろうが」
と大声で注意したドライバーも覚えている。今思えば、叱ったり怒ったりしたというより、
「バス利用者やバスを取り囲む一般客の間違いを正していた」
といった方が正しいかもしれない。不思議なことに、ドライバーに腹を立てる乗客や市民はおらず、渋々ながらも彼らの言葉を受け入れているようだった。それだけドライバーの立場が尊重されていたのだろう。