「今後は自動車が鉄道に近づく」 鉄道技術展で見えた課題(後編) 危機から見直す現在地
3日間の日程で開かれた「第7回 鉄道技術展2021」。新型コロナ禍での鉄道利用者数の減少や、自然災害、電車内での犯罪多発など、前回2019年開催から2年をへて業界の新たな課題が見えてきた。
「今後は自動車が公共交通である鉄道に近づく」

たしかにJR東日本は東京圏の鉄道で、世界に類を見ない高密度大量旅客輸送をすでに実現しており、大量の旅客をさばく自動改札システムと電子マネーを結びつけるユニークな試みで鉄道のイノベーションを起こしてきた。今は直面する危機をきっかけとして、さらなるイノベーションを起こそうとしているようだ。
また、小縣氏や他の講演者は、現在自動車業界が目指している「CASE」は鉄道で実現済みであると述べた。たしかにC(コネクテッド)・A(自動運転)・S(シェア/サービス)・E(電動化)は、それぞれ鉄道のほうが先に実現している。そのためか、「今後は自動車が公共交通である鉄道に近づく」と述べた講演者もいた。
鉄道は、自動車とくらべると、移動経路が限定されるという短所があるいっぽうで、死傷事故の発生確率が低く、エネルギー効率が高いという長所を持つ。このため、利便性では劣るものの、今後求められる持続可能な社会に適しており、近年語られる機会が増えたSDGsにおいても優位な特性を持っている。
このような見方をすると、鉄道はむしろこれから必要性が高まる交通機関であり、必ずしも悲観すべき状況にないと考えられる。