「今後は自動車が鉄道に近づく」 鉄道技術展で見えた課題(後編) 危機から見直す現在地
危機をバネに 語られた鉄道の将来像
「第7回 鉄道技術展2021」が千葉市美浜区の幕張メッセで開催された。会期は2021年の11月24日(水)から26日(金)までの3日間で、多くの鉄道関係者や工事関係者などが集まった。「鉄道技術展」は、日本唯一の鉄道技術の総合展示会だ。
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本記事の「前編」では、このイベントの概要を紹介し、前回(2019年)とのちがいが展示会よりも講演会で見られたことを述べた。本稿ではその「後編」として、講演会で語られたことをくわしく紹介する。
今回の講演会では、この2年ほどで起きた二つの大きな変化について語られた。一つは、コロナ禍や、それによって加速した働き方改革によって鉄道利用者数が減少し、多くの鉄道事業者が収入減によって大きな打撃を受けたこと。もう一つは、ゲリラ豪雨などの自然災害による甚大な被害や、車内での犯罪による乗客の被害が相次ぎ、多くの鉄道事業者が対応に追われたことだ。
これら二つの課題については、とかく悲観的に語られがちだ。日本の鉄道は、人口減少に伴う鉄道利用者数の減少や、鉄道を支える労働者不足に直面している上に、欧州を中心に持続可能な社会の実現に向けた取り組みが加速する波や、100年に一度とされるモビリティ革命の波の影響を受けている。それに加えて鉄道運営をさらに難しくする先述の二つの課題に直面したとなれば、日本の鉄道の将来が悲観的に語られるのも無理はない。
しかし、日本の鉄道には他国の鉄道にない強みがあるし、鉄道そのものにも他交通にない強みがある。今回の講演会では、それらを生かしたポジティブな将来像が語られた。
たとえばJR東日本の顧問である小縣方樹氏は、「公共交通からはじまる革新的な価値の創造」と題した開催基調講演で、同社の挑戦について語った。その挑戦とは、現在直面する危機をきっかけとした、鉄道の新たな価値の創出だ。鉄道を中心とする東京の公共交通の優位性を生かしながら、Suicaで培った技術や、鉄道と二次交通を連携させるMaaSを活用して、より高品位な移動空間の創造を目指すというものだった。