宅配「送料無料」表示は見直すべきか、それとも維持か? 通販事業者は見直し反対表明、ぶつかる物流事業者間のバトルとは
新経済連盟が「送料無料の表示を別の表現に置き換えることは困難」と主張している。本当に困難なのか。
提言に至る背景

この提言に至る背景には、政府が物流の2024年問題に対して、「送料無料表示の見直しに取り組む」と宣言したことがある。
政府の取り組みは送料無料と表示されていることで、
・消費者がどのくらいのコストを誰が負担しているのかまでは、考える必要がなくなる
・安価な商品であってもまとめ買いすることなく単品で購入し、何回配達してもらっても気にならない
・不在にして再配達をしてもらっても、ドライバーには悪いと思うが、送料無料だからそこまで気にしない
といった懸念を解消しようとするものである。
物流事業者側の団体である全日本トラック協会も政府の取り組みに同調し、送料無料表示が
「輸送はコストがかからない」
という誤解を生じさせ、表示の見直しと消費者の理解が必要であると主張している。
政府の表示見直しに向けた施策に対し、2024年問題をはじめとする物流危機は企業間物流を含めた社会全体の問題であるのに、それを
「ECの宅配便だけの問題に矮小(わいしょう)化して捉えられてしまうのではないか」
という意見も見られる。
確かにECによる宅配便の物量は、トラックが運ぶ荷物全体のなかに占める割合はわずかである。トラックで運ばれている荷物の大半は、ECの宅配向けではなく
「企業間の取引」
によるものだ。矮小化と見なされる懸念は、物流全体のなかでも比率が少ない宅配便問題に焦点が向けられ、本来改善を要する企業間物流の問題を隠してしまうのではないかというものである。