高知・とさでん路面電車「運転士不足で減便」の非情 路線縮小か追加投資か、公共交通の持続可能性がいま問われている

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とさでん交通(高知県高知市)が運転士不足で路面電車の一時減便に入った。路線再編を求める報告書が有識者から提出された直後だけに、路線の行方に影響を与えそうだ。

課題山積の上に運転士不足対策も

後免中町停留所に着いた後免線の路面電車(画像:高田泰)
後免中町停留所に着いた後免線の路面電車(画像:高田泰)

 高知市は報告書の提出を受け、指摘された課題の解決策を模索している。しかし、高知市の人口が2010(平成22)年をピークに緩やかな減少に転じるなか、事業に浮かび上がった課題は根深く、簡単に解決できそうもない。

 課題のひとつが設備や

「車両の老朽化」

だ。安全運行に必要な施設整備費が年間約2億3000万円しかなく、必要とされる約8億円に届いていない(必要額の約3割)。車両は運行中の63両のうち、7割が60年以上と老朽化が著しい。これまで必要最小限の施設整備にとどめ、車両更新などを先送りしてきたつけが表れている。

 高知市の持ち出しは増えている。2014年度までは補助金が年間1000万円に満たなかったが、2015年度以降は1000万円を超え、コロナ禍の2020年度は

「4000万円」

近くまで膨らんだ。そこには企業努力だけで経費のすべてをまかなえない苦しい経営状況が見える。

 他の公共交通機関と路線が競合している点も考える必要がある。伊野線のはりまや橋停留場からいの町の伊野停留場までの全区間で路線バスと並走している上、いの町ではJR四国の土讃線も並行して走っている。

 さらに、運転士不足が新たな課題として浮上してきた。2022年末に検討会へ示された高知市の資料では、2023年度に100人余りの運転士を確保できると予測され、問題視されなかった。報告書でも「一定数維持できる」と楽観視しているが、その直後に予測を10人以上下回る厳しい現状が明らかになった。

 2021年度に退職した40代の運転士は

「路面電車の将来に希望を持てなくなった」

と理由を語る。とさでん交通は上期と下期に分けた年2回の募集を通年に切り替えたが、効果は出ていない。問題ばかりが積み重なる状況だ。

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