高知・とさでん路面電車「運転士不足で減便」の非情 路線縮小か追加投資か、公共交通の持続可能性がいま問われている

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とさでん交通(高知県高知市)が運転士不足で路面電車の一時減便に入った。路線再編を求める報告書が有識者から提出された直後だけに、路線の行方に影響を与えそうだ。

狭まる自治体の選択肢

高知市の街並み(画像:写真AC)
高知市の街並み(画像:写真AC)

 結論としては

・身の丈に合った路線延長に縮小する
・自治体が思い切って大胆な投資に踏み切る

しかなさそうだが、支援拡大は簡単でない。関係自治体の財政が厳しさを増しているからだ。

 出資する12市町村のうち、高知市は人口30万人を超す中核市だが、その他の市町村は最も人口が多い南国市で約4万6000人の小規模自治体ばかり。追加の財政支出に大きな期待はできそうもない。

 高知市は2025年度までの3年間で94億円の収支不足が見込まれ、財政再建プランを実行している。標準財政規模に対する借金の元利償還金などの比率を示す実質公債費比率は13.0%で、全国62の中核市の中でワースト2位。標準財政規模に対する将来負担すべき実質的な負債の割合を表す将来負担比率は173.0%で最悪だ。

 人口に占める65歳以上の高齢者の割合が全国平均を上回るペースで上昇して2021年で30%を突破した。福祉サービスに使う扶助費が急増するなか、南海トラフ地震対策に積極的に取り組んだ結果、起債残高はここ数年、2000億円前後で高止まりしている。しかも、元利償還のピークは2024年度。支援拡大のハードルは高い。

 鉄道の運転士不足は各地で顕在化しており、

・長崎電気軌道(長崎県長崎市)
・福井鉄道(福井県越前市)

が減便に追い込まれている。とさでん交通が現在の路線と便数を維持し続けるためには、運転士が確保できるよう支援を拡大して財務状況を安定させる必要がある。

 高知市交通戦略課は

「国土交通省や高知県と相談した上で、関係自治体と持続可能な公共交通の将来像を検討したい」

としているが、取り得る選択肢の幅は急速に狭まりつつある。

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