覚醒する中国人消費者 自国NEVは前途多難も、自動車「本来の価値」に気づき始めたという脅威
2023年、50万円のEVとして話題になった「宏光MINI」の販売激減など、EVをめぐるさまざまな変化が起きており、特に世界最大の中国市場は混迷を極めている。
中国で今起きていること
中国で今起きていることについて、次に述べていこう。
●都市と農村の違い
2023年のNEV普及率は、人口1000万人以上の大都市では40%近いのに対し、人口50万人以下の町では20%と大きな差がある。地方都市は大都市に比べて補助金の財源が少なく、年収の差、充電インフラや販売店の少なさも普及率を下げる要因となっている。
また、需要の違いもある。大都市では高度な技術を搭載した「コネクティッドNEV」が人気だが、地方では農機具や農作物の運搬に適した実用的なNEVが求められている。
現在、人口の約36%を占める農村部は、総人口5億人の巨大市場である。その需要に見合う手ごろな価格のNEVを投入することが成功への近道で、比亜迪(BYD)はAtto3を、小鵬汽車(シャオペン)はG6を投入した。
●過剰な生産能力
コンサルタント会社のオートモビリティは、「中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約1000万台」と見積もっており、これは2022年の米国販売台数1423万台のほぼ70%に相当する。さらに、BEV用のバッテリーパックも過剰生産されている。
主要産業の発展戦略を策定する中国の国家発展改革委員会は、生産能力の過剰を懸念しており、NEV工場の新設承認には慎重な姿勢を示している。
●海外進出
国内市場の停滞を懸念した自動車各社は、中南米やアジア太平洋地域での事業を拡大し、日本やドイツ、韓国が撤退したロシア市場への浸透を強めている。さらに、欧州でのEV需要増加の結果、2023年上半期には約214万台が輸出され、通年で日本を抜いて世界第1位の自動車輸出国となりそうだ。