覚醒する中国人消費者 自国NEVは前途多難も、自動車「本来の価値」に気づき始めたという脅威

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2023年、50万円のEVとして話題になった「宏光MINI」の販売激減など、EVをめぐるさまざまな変化が起きており、特に世界最大の中国市場は混迷を極めている。

求められる国際的な水平分業

欧州は中国にエンジン車を輸出し(濃青)、中国からEVを輸入している(ピンク色)が、その半分はテスラである。中国のEVシフトが進むにつれ、欧州製自動車の対中貿易赤字が予想される(画像:MERICS/Eurostat)
欧州は中国にエンジン車を輸出し(濃青)、中国からEVを輸入している(ピンク色)が、その半分はテスラである。中国のEVシフトが進むにつれ、欧州製自動車の対中貿易赤字が予想される(画像:MERICS/Eurostat)

 また、次の要素もある。

●適社生存
 トヨタ、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズなど、中国市場への依存度が高い企業は中国市場から撤退するのか、加速するのか、彼らは決断を迫られている。VWはシャオペンと提携し、トヨタは中国第一汽車集団、広州汽車集団(GAC)、BYDの3社との合弁で中国でのNEV開発を強化する。一方、三菱は撤退を検討し始め、日産も撤退の危機にある。

 2019年には約500社あった新興NEV企業は現在100社程度に減少しており、しかもBYDとテスラがNEV市場の約半分を占めている。さらに、タイ、インド、ベトナム、インドネシアが「中国の次」を目指しており、将来的に中国の自動車企業は5社程度に減るという見方もある。

●EV製造の水平分業
 こうした状況から見えてくるEVの未来は、「国際的な水平分業」である。iPhoneを生産する台湾のフォックスコンがEV製造の合弁会社を設立した。半導体産業から学んだ「秩序ある国際分業」が望まれる。

 8月上旬、BYDは「中国産業界が団結して世界の古い伝説を打ち破ろう」と愛国的な呼びかけを行い、新興の理想汽車(リ・オート)や上海蔚来汽車(NIO)はこれを称賛したが、中国初の民間企業である長城汽車(GWM)は「競争の現実を受け入れるべきだ」と反撃した。

●消費者が本当に望むもの
 実際、BYD、浙江吉利控股集団(ジーリー)、GWMもPHEV専用エンジンの開発に力を入れている。BEVよりも安価なPHEVを販売することは、中国のNEV価格引き下げ競争では当然のビジネス戦略である。

 また、自動車コンサルティング会社のJSCオートモーティブは、「消費者の関心は、自動運転などの先進装備やつながる車から、安全性や性能、耐久性に向かう。今後5年間が勝負だ」と述べている。

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