「乗って終了」はもう古い? 観光列車の目的「沿線経済の活性化」に本腰入れて考えるときがやって来た
経済効果と達成への困難

観光列車化は実績をあげている。会津若松駅から小出駅までを結ぶ、JR東日本の只見線は、今まさに観光列車による路線維持の経済効果を期待している。
同線は2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨で被災し、一部区間が通常運転となった。廃止の可能性もあったが、沿線自治体の努力で2022年10月に全線再開が決定した。
しかし、地元への負担は重い。JR東日本は上下分離方式(施設の整備・保有主体と運営主体を分離する方式)を採用し、線路や駅舎は福島県が所有、復旧費用約90億円の3分の2を県と会津地方の17市町村が負担することになった。さらに、県と17市町村は年間約3億円の維持管理費も負担する必要がある。
いうまでもなく、只見線は沿線人口が少なく、普段の乗客だけでは維持が難しい。そこでカギとなるのが観光需要だ。
会津鉄道は2022年、会津若松~只見間を往復する8日間の観光列車「お座トロ展望列車」を運行したが、弁当付きでトロッコ席がひとり6000円、お座敷席が6500円で、予約開始から数日で満席になった。観光需要がカギを握る只見線では、このような特別列車を通年運行することで集客を図ると同時に、沿線の観光地をPRして路線の維持を考えている真っ最中だ。
観光列車の経済効果について議論が白熱しているが、宍道駅から備後落合駅までを結ぶJR木次(きすき)線の観光トロッコ列車「奥出雲おろち号」だ。この列車は1998年に運行を開始し、コロナ前の2019年には約1万3000人が利用した。途中停車する出雲三成駅の売店では、運行日には売り上げが10%増する経済効果があった。しかし、JR西日本は老朽化を理由に2023年度で運行を終了すると発表している。
その代替として、2024年から鳥取~出雲市間を観光列車「あめつち」が走る。ただし、「あめつち」は車両性能の都合で運行ルートを変更し、現在人気となっている出雲坂根~三井野原間の3段スイッチバックは運行しない。
沿線自治体でつくる木次線観光客誘致プロジェクトチーム・木次線活用推進協議会では、
「駅で降りたくなる魅力づくり」
を主眼に、従来の観光列車に頼らない観光列車による誘客を検討している。