「乗って終了」はもう古い? 観光列車の目的「沿線経済の活性化」に本腰入れて考えるときがやって来た
JR九州が観光列車に注力したワケ
そんな観光列車に特に熱心なのが、JR九州(福岡県福岡市)である。
同社は国鉄が分割民営化された時点で赤字が確実視されていた「JR三島(さんとう)会社」のひとつだった。発足時点から、福岡都市圏を除くほとんどの鉄道事業が赤字という厳しい経営環境にあった。
さらに1990年代には、九州の高速道路網が整備されて高速バスとの競争が激化したため、単に乗客を運ぶだけでは鉄道の優位性を保つことはできなくなった。こうした厳しい経営環境が
「乗って楽しむ鉄道」
を発展させる要因となったのだ。
それは1989(平成元)年にデビューした特急「ゆふいんの森」から始まった。ヨーロッパの避暑地に向かう高原列車をコンセプトとし、客室に木材を使用するなどレトロな雰囲気を演出した。当時、湯布院温泉が観光地として人気を集めつつあったこともあり、たちまち話題となった。この列車がヒットして
・指宿のたまて箱
・SL人吉
・海幸山幸
・あそぼーい!
などの観光列車が各地で運行されるようになった。この成功を通じて、JR九州は、一般にはあまり認知されていなかった
「電車に乗ることを目的とした旅行」
を定着させた。
そんな観光列車を新たなステージに押し上げたのが、「クルーズトレイン」と呼ばれる豪華寝台列車の登場だ。第1弾はJR九州が2013年10月に運行を開始した「ななつ星in九州」である。この列車は予約時点で3泊4日で
「39万~57万円」
という高額にもかかわらず申し込みが殺到し、募集人数の9倍を超え、1600組のキャンセル待ちが出た。
クルーズトレインのコンセプトは、列車の切符ではなく、宿泊と食事がセットになったツアーである。第1弾の旅程は、
・長崎/阿蘇/湯布院を巡る1泊2日のコース(15万~22万円)
・霧島温泉も訪れる3泊4日のコース(39万~57万円)
どちらのコースも、豪華列車での旅、九州の旬の食材を使った美食の味わい、ゆったりとした温泉地巡りなどが含まれていた。