オリエント急行「ロンドン~フランス」廃止で、ドーバー海峡はさらなる“分断の象徴”と化す?
4月中旬、オリエント急行が2024年以降ロンドン発着を取りやめるという報道がなされた。廃止が生む真の問題とは。
オリエント急行のロンドン発着廃止

4月中旬、オリエント急行が2024年以降ロンドン発着を取りやめるという報道がなされた。
筆者(小田坂真理雄、国際トラフィックライター)はいくつかの報道を確認したが、いずれの記事にも
「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス(以下、VSOE)の運営会社は、ブレグジットの影響により、2024年以降ロンドン~フランス間の運行を廃止する」
とのリード文が踊っていた。
オリエント急行といえば、世界的な豪華旅客列車の代名詞的存在である。
例えば、ヨーロッパの旅行サイトで今回報道されたVSOEを検索すると、ロンドンからハンガリーの首都ブダペスト間では、車中泊2泊で片道ひとりあたり4025ユーロ(約61万円)からと結果が表示される。
もちろん、豪華な車両での鉄道旅行に加え、フルコースディナーやワイン、フレンチブレックファースト、アフタヌーンティーなどサービスが充実している。日本でいうと、JR九州のななつ星in九州やJR西日本のトワイライトエクスプレス瑞風といったところだろう。
ひとつ補足すると、ロンドン~フランス間の運行を取りやめるとなっているが、実は1本の列車でロンドンから各地に向かっているのではない。
ロンドンからイギリス南東部の港町であるフォークストーン間は、VSOEの姉妹列車であるベルモンド・ブリティッシュ・プルマンを利用している。ドーバー海峡は専用バスに乗り換えて渡り、フランスのカレーからいわゆるオリエント急行の車両に乗車してそれぞれの目的地へ向かっている。いわば、オリエント急行の車両を利用した旅行パッケージといえよう。
ちなみにVSOEの運営会社によると、廃止後はロンドンからパリまでユーロスターを利用した旅行を提供するとしている。