日本車の牙城「タイ」 EV戦争ぼっ発で、タイ政府が中国になびき始めたワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(3)

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急速に変化・成長する経済圏として、世界的に注目されているアジア。この地域発のモビリティ・アプローチが、今後の経済において重要な役割を果たすことはいうまでもない。本連載では、アジアにおけるモビリティに焦点を当て、その隆盛に迫る。

「日本車の牙城」だったタイ

タイ(画像:OpenStreetMap)
タイ(画像:OpenStreetMap)

 タイの自動車メーカー、サイアム・モーターズが中国の複数の自動車メーカーと提携に向けた協議を進めていると、ロイターが7月10日に報じた。

「日本車の牙城」といわれてきたタイの自動車生産台数は、約190万台(2022年)に達して、

・世界:第10位
・東南アジア:第1位

である。

「東洋のデトロイト」とも呼ばれるタイは、国産自動車ブランドの確立ではなく、日本の自動車メーカーを受け入れる形で自動車産業を形成してきた。サイアム・モーターズこそ、その象徴的な存在だった。

 創業者のターウォン・ポーンプラパー氏は、1913年に福建省・潮州で生まれ、鉄くず業を営む父を手伝いながらビジネスを学んだという。若い頃に旅行で訪れた日本の近代化に感激し、1940年代に日産自動車の輸入販売を開始した。これが、自動車ビジネスに参入するきっかけとなった。

 ポーンプラパー氏は1952年にサイアム・モーター社を設立、1962年にはサイアム&ニッサン・モーターを設立し、バンコクで日産車の組立工場の操業を開始した。同社は、日産だけではなく、

・コマツ建機
・日立ビルシステム
・ダイキンエアコン
・ヤマハ音楽教室

といった日系企業とも提携している。同社は1970年代には、ホテル・リゾート事業にも参入、ゴルフコースの開発も進めてきた。

 タイでは、新車販売台数のシェア

「約9割」

を日本勢が占めている。サイアム・モーターズの動きは、日本車の牙城・タイにおいても地殻変動が起こりつつあることを示している。

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