日本車の牙城「タイ」 EV戦争ぼっ発で、タイ政府が中国になびき始めたワケ【連載】方法としてのアジアンモビリティ(3)
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地殻変動が起こりつつあるワケ
その背景には、電気自動車(EV)を重視するタイ政府の姿勢がある。2030年に国産車の3割をEVとする目標を掲げるタイ政府は、2022年2月にEV普及に向けた新しい奨励制度を承認した。これにより、EVの販売価格を引き下げるための補助金支給や、物品税と輸入関税の引き下げが決まった。
中国民営自動車大手の長城汽車(GWM)は2021年11月、タイで小型EV「欧拉好猫(ORA Good Cat)」の販売を開始していたが、補助金支給などの措置によって、販売価格は98万9000バーツから82万8500バーツに下げられた。
タイ政府の奨励制度に支えられて、中国のEVメーカーはタイ市場での攻勢を強めた。中国のEV大手・比亜迪(BYD)は、2022年秋にタイ市場への参入を発表、同年10月には「ATTO 3(中国名「元PLUS」)」を約119万9000バーツ(約496万円)で発売した。
発売1か月で7000台を受注する好調なスタートとなった。BYDは2023年3月22日には、タイ最大規模のモーターショー「第44回バンコク・インターナショナル・モーターショー2023」で、コンパクトEV「DOLPHIN(ドルフィン)」を発売している。販売価格は79万9999バーツ(約306万円)。
一方、中国のEVメーカー合衆新能源汽車は、2022年秋にタイで「NETA V」の販売を開始した。販売価格は54.9万バーツ(約209万円)。
中国のEVメーカー各社がタイ市場でしのぎを削るなかで、タイのEV登録台数は急速に増えている。2023年1~6月のEV新規登録台数は3万1738台に拡大。すでに、2022年通年の3倍を超えている。6月には7637台のEV車が登録されているが、登録数1位は「NETA V」、2位が「ATTO 3」、3位が「欧拉好猫」。