自家用車で勝手に営業 「白タク」はそもそもなぜ違法なのか?
白タクから個人タクシーへ
ところが、共済組合は白タクの車両を集めてパレードを行い、営業を強行した。そして、社員ドライバーの過酷な労働実態を訴え、個人タクシーが認められたら雇用が改善するばかりか、神風タクシーもなくなり、乗客も安心してタクシーを利用できる――としたのである。
この白タクは初乗り2km50円。たちまち大勢のドライバーが集まり、当局も取り締まりできなかった。
こうして1959年12月、運輸省は個人タクシーの復活を認め、認可を与えた。ただ、各地の陸運局では地域のタクシーの増車数を絞ったため、全て一律で個人タクシーとはならず、白タクは継続した。
そうしたなか、同月の京都市で、全国でも例を見ない白タクの大規模摘発が行われた。これに対抗して、組織化されていたドライバーたちが無料タクシーを始めた。客から運賃を受け取らず、白タクから個人タクシーへの転換を求める闘争資金のカンパとして受け取った。こうした闘争は、個人タクシーの枠が拡大していくまで数年にわたって続いた。
やがて個人タクシーが広く認可されるようになると、白タクは姿を消し、わずかに非合法の隙間産業として残るだけになった。
時は流れ、白タクが再び話題となったのは2015年だった。安倍内閣が提言した「白タク解禁案」である。これは業界への参入規制を緩和し、価格も緩和・自由化することを目的としていた。
念頭に置かれたのは、既に世界各国で展開していたウーバーの解禁である。ウーバーはライドシェアと呼ばれる事業を行っていた。ライドシェアを直訳すれば「相乗り」、ようは自家用車を使って有償で乗客を運ぶ行為である。
国土交通省はこれを白タクであるとして、猛反発した。2015年2月に福岡市で実証実験が行われたものの
「道路運送法に抵触する可能性がある」
と判断され、行政指導も行われた。