全固体電池ばかり注目してはいけない! トヨタ発表で垣間見えたリチウムイオン電池「商品性向上」の可能性、今後のBEV戦略を予想する

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トヨタは6月13日、現在実用化に向けて開発中の次世代技術を一挙公開した。全固体電池ばかりに注目があつまった今回の発表だったが、実は他にも興味深いものがあった。

BEV戦略が目指すもの

2023年、主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)
2023年、主要メーカーの電気自動車(BEV/PHV/FCV)販売台数推移(画像:マークラインズ)

 こうなると話は少し変わってくる。

 確かに全固体電池の予想スペックは素晴らしい。その将来性もおそらく高いだろう。しかしコスト面での未知数がネックとなるのはいかんともし難い。実用化されても搭載できるのはごく一部のモデルだろう。

 それに対して、次世代のリチウムイオン電池の総合性能は素晴らしい。何よりも性能をアップさせながらコスト削減を行っていることは高く評価できる。

 ここまで来ると、2028年頃のトヨタのBEV戦略がおおむね推測できる。全固体電池が搭載されるのは、多少のコスト高はブランド価値で相殺できるレクサスのハイエンドモデル。その上で、北米の様な最大航続距離が重視される市場向けモデルが優先となるだろう。

 対して国内外市場での主要モデルにマッチするのはパフォーマンス版となる。そしてハイパフォーマンス版は同市場における

「上級ブランドやスポーツモデル」

に搭載されることが予想できる。一方、商用車やベーシックモデルには普及版への搭載が既に検討中とのことである。

トヨタの「強み」とは

マニュアルBEV(画像:トヨタ自動車)
マニュアルBEV(画像:トヨタ自動車)

 トヨタの強みは、こういった市場の多様性を決して忘れてはいないという点にある。性能的にハイエンドを追求することは、ある企業体が持つ総合技術力を高める上では極めて有効である。

 しかしその一方で、市場全体でより高く評価されるのは多様性である。「性能はともかくその価格ではとても……」ではなく、

「この価格だったらウチでも導入できる」

そう思わせた商品が成功のきっかけとなる。そうしたシンプルな経済原則の在り方を改めて強く感じたトヨタの新技術発表だった。2028年、市場がどうなっているか、今後も注視して行きたい。

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