全固体電池ばかり注目してはいけない! トヨタ発表で垣間見えたリチウムイオン電池「商品性向上」の可能性、今後のBEV戦略を予想する

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トヨタは6月13日、現在実用化に向けて開発中の次世代技術を一挙公開した。全固体電池ばかりに注目があつまった今回の発表だったが、実は他にも興味深いものがあった。

リチウムイオン電池の「商品性向上」も

副社長の中嶋裕樹氏(画像:トヨタ自動車)
副社長の中嶋裕樹氏(画像:トヨタ自動車)

 さて、全固体電池ばかりに注目があつまった今回の発表ではあったが、実は他にも興味深いものがあった。それは既存のリチウムイオン電池の大幅な

「商品性向上案」

である。ここで性能向上ではなく商品性向上と表現したのにはわけがある。

 それは新たに提供される電池は、使用する用途に合わせコストパフォーマンスの面での刷新が図られているということだ。それについて具体的に内容を見てみよう。新しいリチウムイオン電池には3種が計画されている。

 まずは2026年に実用化を目指しているパフォーマンス版である。これは使用する電池素材や構造を大きく変えることなく、基本となるエネルギー密度を高めつつ車両側の空力性能向上や軽量化などを併用したものだ。

 その最大航続距離はbZ4Xとの比較で200%。すなわち1230kmだ。この数字は控え目に1000km以上とも表現されているが、いずれにしても優秀である。その上で最短充電時間を20分に。コストも-20%を目指す。

 続いて、2026年から2027年をめどに実用化を目指すという普及版である。これは正極素材に安価なリン酸鉄リチウムを使用、構造をバイポーラと呼ばれるシンプルなものとすることで、コストを-40%としたもの。最大航続距離はbZ4Xとの比較で+20%の738km。最短充電時間は30分とbZ4Xと変わらない。

 最後は2027年から2028年での実用化を想定したハイパフォーマンス版だ。これはバイポーラ構造とハイニッケル正極を組み合わせたもので、最大航続距離はbZ4Xとの比較で210%。すなわち1291kmである。最短充電時間は20分。その上でコスト削減量をパフォーマンス版と比較してさらに10%を上積み。すなわちトータルでは-30%のコスト削減を目指すという。

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