日本経済を今後左右? 中国~ヨーロッパを結ぶ貨物列車「中欧班列」という、いまだ知られぬ輸送手段とその重要性

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国際間貨物輸送の手段として、鉄道の価値が一段と高まっている。その背景には、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」によってユーラシア大陸を横断する鉄道網の整備がある。

政治を切り離した経済関係を

コンテナ(画像:西安国際港務区)
コンテナ(画像:西安国際港務区)

 鉄道整備で重要なのは、

「中国と中央アジアとの一体化」

が推進されていることだ。

 中国は一帯一路のもとで中央アジアへの投資を推進してきたが、その効果は確実に現れている。もはや、中央アジアから中東諸国までの多くの国々は、鉄道輸送によって供給される中国製品の市場であり、原料供給地となっている。

 例えば、内陸部の陝西(せんせい)省は伝統的にクルミの栽培が盛んだが、物流がネックとなり国内消費にとどまってきた。ところが、2021年以降、西安経由で中央アジアへのクルミ輸出が可能になり、新たな市場が開拓されている。一方、中国の漢方薬の原料も鉄道を使って中央アジアから輸入されており、これも増加している。

 いまや、ユーラシア大陸で最も安定的な輸送手段となっている中欧班列。それをいかに利用するかが、これからの日本経済を左右するといっても過言ではない。

 日本政府は「西側諸国の一員」として旗色を鮮明にしているが、皮肉なことにサプライチェーンは中国と極めて密接である。今後の日本経済のあり方を考えるとき、中国の主導する鉄道輸送は欠かせないだろう。

 太平洋戦争後、日中国交正常化(1972年)に至るまで、日本は台湾に逃れた中華民国を政党政権としていた。結果、1950年には一時、対中輸出を全面禁止する措置まで実施された。しかし、これは日本経済に打撃を与えた。

 かつての自民党政権では、

「政治と切り離して経済関係を求める方法」

が模索されたが、中国側は政経不可分を原則とし交渉は難航した。

 その後、日中貿易は親中派自民党議員のくり返しの訪中による説得、民間企業要人の交渉により、

・1960年:友好商社(中国側が指定した日本の貿易会社)取引
・1962年:LT貿易(日中間の準政府間貿易)

として、ようやく再開されるに至っている。

 21世紀、再び政治的に深刻な対立が起きている。いまこそ、経済重視路線へとかじを切るべきではないか。

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