日本経済を今後左右? 中国~ヨーロッパを結ぶ貨物列車「中欧班列」という、いまだ知られぬ輸送手段とその重要性

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国際間貨物輸送の手段として、鉄道の価値が一段と高まっている。その背景には、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」によってユーラシア大陸を横断する鉄道網の整備がある。

欧州自動車メーカーも鉄道シフト

西安(画像:OpenStreetMap)
西安(画像:OpenStreetMap)

 また、内陸部の工業地帯に進出した企業が、ヨーロッパ方面への貨物の出荷方法を求めていたことも大きかった。

 当初は貨物の安全性が危ぶまれていたが、次第に利用企業は増加した。安いが日数がかかる船便と、早いが高額な航空便の「中間」に位置していたことに加えて、正確なオペレーションを実行できるシステムが整備されたためだ。

 結果、ボルボやフォルクスワーゲンなど欧州自動車メーカーでも、部品や完成品の輸送を鉄道へとシフトさせていった。

 2022年8月に中国税関総署が発表したデータでは、2021年に中国と中欧班列が結ぶ欧州24か国との貿易額は

「6兆8800億元」(134兆5000億円。前年度比19.7%増)

となっており、同時期の中国貿易全体の約17.4%を占めるまでに成長している。

 中欧班列の成長によって、巨大なターミナルとなった都市のひとつが前述の西安である。そんな西安に建設されたのが「西安国際港駅」である。

 2006年9月に「新竹駅」として開業した駅は、2013年に中欧班列の路線の運行を開始。開業時点では、貨物営業のない、乗り換えのみ7路線の四級駅だった。しかし、2018年に現在の駅名に改称されるときには53線の一級駅となっていた。

 いうまでもなく国内中央部では最大の貨物駅だ。中国国家鉄路集団によれば、この巨大な貨物駅の誕生によって、

「数千億ドルレベルの電子産業」

が、中国東部から移動しているとしている。

 また、国際運輸の活況は中国内陸部や中央アジア諸国の経済も活性化させている。中欧班列は線路幅が違うため、途中で積み替えが必要になる。結果、積み替え駅周辺が新たな物流拠点となって発展しているのである。

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