吉野家の定年社員「ドライバー再雇用」は賢明な判断か? 2024年問題フル対応も、体のいい「退職勧奨」に使われないか
牛丼チェーンを展開する吉野家が、定年を迎えた社員のトラックドライバー再雇用を検討していることがわかった。メリットとデメリット両面を考える。
ドライバー不足への取り組み

牛丼チェーンを展開する吉野家(東京都中央区)が、定年を迎えた社員のトラックドライバー再雇用を検討していることがわかった。時事通信が4月19日に報じた。
トラック運送業界は、時間規制が強化される「2024年問題」でドライバーが大幅に不足するのではないかと懸念されている。ドライバー不足については、2024年問題(労働時間を規定時間以内にすること)を仮にクリアしたとしても解消するものではない。
トラックドライバーとして働きたいという人たちはこの先も大きく増えることは見込めず、労働人口の減少も相まって当面ドライバー不足は続くと想定されている。
しかし、運ばなければならないものがあるのに、ドライバーがいないために運べないということでは、ビジネスそのものが成り立たない。吉野家が検討している取り組みは、少しでもその問題を解消しようとするものである。
常につきまとう配送リスク

吉野家の発表によると、60歳で定年となった社員を嘱託社員として再雇用し、物流センターから店舗へ配送するトラックに乗務してもらう。今後、徐々に対象の配送コースを増やしていくという。
この取り組みによるメリットを、企業の側面と従業員の側面から見てみたい。
まず、企業側のメリットは、第一に前述のとおり、ドライバー不足を若干なりとも解消することができるというものである。
「荷物があっても運べない」
ということに対する一助となることは間違いない。
現状は外部の物流会社に配送を委託しているものの、委託先の物流会社が今後も継続的に配送を請け負ってくれる保証はない。運送業界全体がドライバー不足となっている限り、運べないリスクは常につきまとうのである。