吉野家の定年社員「ドライバー再雇用」は賢明な判断か? 2024年問題フル対応も、体のいい「退職勧奨」に使われないか
物流コスト低減の可能性
第二に、吉野家の物流コストが低減される可能性がある。
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一般的に、定年後の再雇用では定年前と比べて給与が下がることが多い。基本給の水準が下がったり、役職から外れて役職手当がなくなったりする。そのような定年を迎えた人たちの人件費と、委託先に支払うドライバーの人件費を比較した場合、コストを抑えて物流費用を低減できる可能性がある。
企業側のメリットの三つ目としては、社員に雇用の場を幅広く提供することが可能となることがある。
出店が続き、店舗運営の要員が常に求められる状況であれば定年後の社員も店舗勤務の人員として求められるが、出店スピードが落ちると人員が余剰となる恐れがある。定年後の雇用の場が狭まると、現役世代の社員のモチベーションも低下する。さまざまな職域を提供することで社員に安心感を与えることができるだろう。
次に、従業員側のメリットとしては、働ける職場の選択肢が広がることが挙げられる。
定年後は、現役時代とは違う職場で働きたいと思う社員もいるだろう。今までの部下のもとで気を遣いながら働くよりも、心機一転新たな仕事にチャレンジしたいという人もいる。そのような人たちにとって、職業の選択肢が広がることは決して悪いことではない。吉野家の場合、運転するトラックは2t車とのことで、自動車の普通免許を持っていればすぐに乗務は可能となる。
雇用継続の機会拡大
また、企業側のメリットと同様だが、雇用の場が広がるということは、安心して働けるようになるということである。
現在は65歳までの雇用確保措置が義務付けられ、従業員が希望した場合は再雇用制度などで65歳まで雇用することが原則となっている。しかし、65歳を過ぎた社員については、70歳まで雇用することは努力義務となっており、雇用が継続されるとは限らない。
働く場がなければ、企業は当然のこととして雇用関係を終了させるだろう。働くところが増えれば、雇用継続の機会も広がることになる。
さらに、ドライバーとなっても自社の店舗や仕組みを熟知しているので、今までの経験を生かして働ける。ドライバーの目から見た物流改善の提案にもつながるかもしれない。