吉野家の定年社員「ドライバー再雇用」は賢明な判断か? 2024年問題フル対応も、体のいい「退職勧奨」に使われないか
牛丼チェーンを展開する吉野家が、定年を迎えた社員のトラックドライバー再雇用を検討していることがわかった。メリットとデメリット両面を考える。
「退職勧奨」に利用される恐れも
一方で、60歳の定年後にドライバーとして雇用されることへの懸念もある。
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従業員の立場として心配なのは、
「定年後はドライバーとして勤務してください」
と半ば強制されることだろう。今まで通り店舗や本部で働き続けたいと思っていても、
「そこでの仕事はありません。ドライバーであればこれからも働くことができます」
と言われることを避けてほしいと思うのは当然である。その場合、職域は広がるどころか、選択肢がないことになってしまう。
「体のいい退職勧奨」
に利用するのはやめてほしいというのが本音だろう。
他企業波及へ可能性も
また、吉野家のドライバーは米や肉などの食材、店舗で使用する資材などを運ぶことになる。肉体的な負担は軽くない。
台車に乗せて運ぶことができない店舗も多いため、トラックを駐車させた場所から店舗内の所定の場所まで荷物を何往復も手で運ぶ必要がある。体力に自信がなければドライバー職につくことをちゅうちょしてしまうかもしれない。
それらの懸念を払しょくできれば、定年後にドライバーとして働くことを選べることは、企業、従業員双方にメリットが見いだせる。
前述のとおり、現在の定年制度では65歳までの雇用確保措置が義務となっており、70歳までは就業機会を確保するための努力義務が課せられている。やがて70歳程度までの雇用確保が義務付けられるような法改正があるかもしれない。
その場合、従業員が働ける場を広く用意しておくことのメリットは大きい。安全運転ができるという前提で、定年後にドライバー職として働くことを選択できる制度は、他の企業にも広がっていく可能性を秘めている。