新横浜駅周辺は「西武王国」 鉄道乗り入れないのになぜ? その背後にあったどす黒い歴史とは

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西武鉄道は新横浜線に乗り入れていないにもかかわらず、新横浜駅周辺には新横浜プリンスホテル、新横浜ペペなど、西武系の施設が目立つ。いったいなぜか。

南口が未開発なワケ

新横浜駅(画像:写真AC)
新横浜駅(画像:写真AC)

 筆者(昼間たかし、ルポライター)は本媒体で先日、「神奈川の謎! 新横浜駅の「南口」がちっとも開発されていない理由」(2023年4月23日配信)という記事を書き、新横浜駅の北口と篠原口(南口)の風景の落差について、その原因を明らかにした。

 高層ビルが立ち並ぶ北口とは対照的に、南口の風景は「郊外」そのものである。その背景には、区画整理を巡る横浜市と南口の住民による対立の歴史があった。

 そして、記事の文末に

「今回書いた区画整理がこじれた理由もごく一部にすぎない。実は、新横浜駅周辺の区画整理を巡っては、新横浜駅が現在地に設置されることが決まった時点から企業の暗躍があった。それについては資料をさらに深掘りし、日を改めて記すことにする」

とも書いた。ということで、今回はその続きをお伝えしよう。

新横浜駅周辺は「西武王国」

新横浜プリンスホテル(画像:写真AC)
新横浜プリンスホテル(画像:写真AC)

 対立の発端はなんだったのか――。

 数多くの資料を読み解くなか、ひとつの手がかりが見えてきた。それは、新横浜駅開業(1964年10月1日)時に起きた

「土地買い占め騒動」

である。新駅開業による利益を独占しようした企業は、どういった手口を使ったのか。

 神奈川県の私鉄といったとき、まずイメージされるのは東急電鉄(東急)と相模鉄道(相鉄)だ。相鉄と東急をつなぐ新線「新横浜線」の開通で、新幹線駅直結となった両者の存在感はさらに増している。

 ただ、

・東急新横浜線
・相鉄新横浜線

と、両者が路線名に使っているにもかかわらず、新横浜駅周辺で両者の存在感は薄い。沿線に必ずといってよいほど目にする「東急ストア」のような系列店舗が、全く存在しないのだ。

 そのかわりに目立つのが、西武系の店舗だ。西武鉄道の路線は新横浜線に乗り入れていないにもかかわらず、駅周辺に関連施設が目立つ。

 代表格は、新横浜プリンスホテル(西武・プリンスホテルズワールドワイドが運営)だ。さらに、駅前には新横浜プリンスペペ(西武リアルティソリューションズが運営)。駅ビルのキュービックプラザ新横浜は、JR東海の子会社である新横浜ステーション開発が所有しているが、ここには新横浜ロフト(現在のロフトはセブン&アイ・ホールディングス傘下)が入居している。

 横浜アリーナの運営会社の最大株主は西武鉄道である。また、2021年に売却方針が発表されたが、駅前には新横浜西武ビル(この時点では西武鉄道が保有し西武プロパティーズに賃貸。その後売却先の続報はない)もある。いわば、鉄道が乗り入れてもいないのに、新横浜駅周辺は

「西武王国」

なのである。

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