ヘリコプターと「空飛ぶクルマ」 結局何が、どう違うのか? 言わずもがな“翼”の数だけじゃなかった!
ヘリコプターと「空飛ぶクルマ」の違いとは。言わずもがな、回転翼の数だけではない。ではいったい何が違うのか。
ローター・システムの違い
ヘリコプターとeVTOLの違いに関して見過ごされがちなのが、このローター機構の違いだ。
ヘリコプターを観察すると、ローターの根元はヒンジ(ちょうつがい)やベアリングで構成され、複雑な可変機構を備えていることがわかる。ヘリコプターの飛行安定や操縦は、基本的にローター翼の周期的な角度制御によって実現されており、この機構が飛行性能や特性を決定的に左右している。複雑なローター・システムこそ、まさにヘリコプターの心臓部なのである。
これに対しeVTOLのローター機構は簡素で、せいぜい飛行機のプロペラ程度の可変機構しか備えていない。そのため、ヘリコプターを扱ってきた航空工学の世界では、eVTOLの「ローター」をローターと呼ぶべきではないとする議論さえある。
ヘリコプターにおけるローターの周期的制御は、操縦制御に使われるだけではなく、高速な前進飛行も可能にしている。ヘリコプターが前進飛行を行うと、回転するローターは回転面の左右で前進と後退の非対称性が発生するので、ローターのピッチ角を制御しないと左右で揚力が異なってしまい、機体が横転してしまう。そこで、ローターの角度を周期的に変えてやり、左右の揚力差が生じない仕掛けになっているのだ。
eVTOLは左右対称にローターを配置しているので、各ローターの周期制御を行わなくても左右の非対称は発生しないが、その代わり高速で前進飛行する場合の効率は低くなってしまう。