ヘリコプターと「空飛ぶクルマ」 結局何が、どう違うのか? 言わずもがな“翼”の数だけじゃなかった!
「空飛ぶクルマ」とは何か

日本では「空飛ぶクルマ」という言葉がすっかり定着しており、報道でもこの用語が使われるのが普通になっている。ただ、ほとんどの場合、これは「eVTOL(イーブイトール)」と呼ばれる概念の航空機を指している。
VTOLは垂直離着陸機を指す既存の用語で、頭につく「e」は電動であることを示している。つまり、滑走路を使わず、ヘリコプターのように垂直に離着陸が可能な電動航空機が、空飛ぶクルマすなわちeVTOLである。
空飛ぶクルマという言葉が定着する前には、これを
「有人ドローン」
と呼んでいたこともある。ドローンは無人機のことだから語義矛盾だが、既に無人のeVTOLがドローンの呼称で普及しているので、表現としてはわかりやすい。
外形的にも、ほとんどの民生用ドローンは多数のローターを持つ「マルチコプター」形態であり、これが空飛ぶクルマにも継承されている。従って、無人のeVTOLとして発達してきたドローンを、より大型にして有人化したのが空飛ぶクルマだと考えても差し支えない。
ヘリコプターとeVTOLの違い

これまで実用化されているVTOLは、例外的なジェット軍用機を除いて、ヘリコプターが唯一の形態である。数人乗りの小型ヘリコプターから、数十人を乗せることができる大型輸送ヘリコプターまで、さまざまな機種が活躍している。
ヘリコプターは機体の上で大きなローター(回転翼)を回転させ、飛行のための揚力を発生させている。動力は固定翼の飛行機と同様に、ガスタービン・エンジンやピストン・エンジンである。
一方、eVTOLは四つ以上の小さなローターを持つマルチコプターで、それぞれを個別のモーターで駆動するのが一般的だ。ヘリコプターは通常ひとつの主ローターしか持たないので、この点は外見的にも大きな違いである。
操縦や制御の仕組みも、ヘリコプターとeVTOLでは根本的に違う。
ヘリコプターは、複雑なローター・システムで安定や操縦が制御されるが、eVTOLは複数のローターを自動制御するコンピューターが安定維持や運動制御を担うため、パイロットの操縦は必ずコンピューターを通して行われる。