MSJはなぜ「開発中止」に追い込まれたのか? 本当に日本の技術を憂うなら、まず製造国として型式証明を承認せよ
日本の国産旅客機スペースジェット開発に対して、ついに中止の決定が下された。もし、日本という国が将来の旅客機製造に希望をつなぐならば、今後どうすればよいのか。
コロナ禍の中での開発中止
日本の国産旅客機スペースジェット(MSJ、旧称MRJ)開発に対して、ついに中止の決定が下された。
2020年10月に三菱航空機が計画「凍結」を発表した後、20機の購入契約を交わしていたエアロ・リース社との提携も2021年1月に解消され、2022年3月末にはワシントン州にある飛行試験の拠点も閉鎖していたため、中止の発表は時間の問題ではないかとも見られていた。
MSJ開発凍結の決定は2019年末からのコロナ禍の最中であり、旅客機需要の先が見通せない航空産業界が大きな混乱に陥っていた時期でもあった。三菱航空機では、ポスト・コロナの旅客機需要回復も視野に入れつつ、「凍結」という慎重な言葉を使って「いったん立ち止まる」としていたが、開発再開の希望は夢と消えた。
仮に開発を再開する場合、型式証明を取得するためには、数千億円の追加費用を要するという。自衛隊向けの軍用機であれば、P-1哨戒機とC-2輸送機の同時開発やF-2戦闘機の開発費用が総額でも3000億円台だったので、旅客機の開発には膨大なコストを要することがわかる。
三菱重工業によれば、開発を担ってきた子会社の三菱航空機は清算し、社員は親会社である三菱重工業の防衛航空機部門などに吸収するとしている。