トヨタ「新人事制度」を支える3本柱 「多様性」「成長」「貢献」が全く目新しくないワケ

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トヨタが打ち出した新人事制度。3本柱の取り組みである「多様性」「成長」「貢献」を読み解く。

要望するだけでなく資源も提供

佐藤恒治社長(画像:トヨタ自動車)
佐藤恒治社長(画像:トヨタ自動車)

 さらにトヨタらしいと思えるのは、これらの「多様性」「成長」「貢献」を実現するために、単にそれらを従業員に要望するだけではなく、そのために必要な資源を会社側として提供するということである。

 具体的には、新しいチャレンジを実現するために

「約700人の新規人材」

を採用するという。

 ときに、自動運転や電気自動車などで自動車業界に新規参入をしてきているようなグーグルをはじめとするGAFAは全世界で「1万人規模」での人員削減の真っ最中だ。そんななかでの逆張りは人を大切にするトヨタらしい。

 このように、トヨタの人事施策はいつまでも変わらない本質的なものを大事にしつつ、新しい変化も取り入れるという不易流行なのである。その本質は、繰り返しになるが、あくまでも人間尊重であり、「徹底的な人材育成と強固なチームワークによる成果の最大化」の責任は会社にあるということである。

「会社は従業員の幸せを願い、従業員は会社の発展を願う」

というトヨタ労使間の最も大切にされている変わらぬ価値観がにじみ出ている。これはトヨタだからできたという考え方もあるが、そうではなく、このような人を大切にするというシンプルな方針を、リスクを背負いながらも貫いてきたからこそ超優良企業になったのではないか。

 引き続きトヨタの人事施策にはひとつのお手本として注目していきたい。

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