トヨタ「新人事制度」を支える3本柱 「多様性」「成長」「貢献」が全く目新しくないワケ

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トヨタが打ち出した新人事制度。3本柱の取り組みである「多様性」「成長」「貢献」を読み解く。

変わらぬトヨタの人事施策

2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタ自動車のロゴマーク(画像:AFP=時事)
2022年10月31日撮影、東京都内の自動車ショールームに掲げられたトヨタ自動車のロゴマーク(画像:AFP=時事)

 2023年3月15日、約1か月に及んだトヨタ自動車の労使協議会(労使協)が最終回を迎え、佐藤恒治時期社長(現・社長)、東崇徳人事本部長は、トヨタの今後の働き方や新人事制度に関する発表を行った。

 愛知県豊田市出身で、祖父がトヨタの人事、親兄弟もトヨタや関連企業に勤めており、多少、「トヨタらしさ」的なものに薫陶を受けて育った私個人としては、率直に

「世の中に合わせるのではなく、自社の状況をしっかりと見据えた上で、変わらぬ質実剛健な人事をやっている」

と感じた。と言うのも、打ち出した人事施策に、世の中のはやりに乗るというような軽佻(けいちょう)浮薄なものがなかったからである。

「目新しさ」など必要ない

佐藤恒治社長(画像:トヨタ自動車)
佐藤恒治社長(画像:トヨタ自動車)

 今回、トヨタが打ち出した新人事制度は「だれもが、いつでも、なんどでも、失敗を恐れず挑戦できる」ために、

・多様性(自分らしい人生を)
・成長(挑戦と失敗を財産に)
・貢献(産業の未来のために)

という3本柱の取り組みを行うというものであった。

 これは何も新しいことではなく、「トヨタ自動車75年史」にもあるように、手法を見直しただけであり、つまり人間尊重や徹底的な人材育成と強固なチームワークによる成果の最大化というような底流に流れる基本的な考え方は変わらない。

「世の中的に目新しいものは何もない」

とも言えないこともないが、そもそも人事に目新しさなど必要ではない。今の自社や従業員にとって適していれば、そんなことはどうでもよい。

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