ANA国内線システム障害 露呈した「高速移動サービス」という基本的価値の欠如、改めて問われる情報管理体制とは
55便が欠航

4月3日午後、全日本空輸(ANA)の国内旅客データベースの一部が停止し、国内線全便の予約、販売、搭乗手続き、そのほかの各種案内ができなくなった。結果、55便が欠航、153便が30分以上遅延した。
その余波を受け、翌日4日も2便が遅延、計
「約2万7000人」
が何らかの形で影響を受けた。
また、影響はエア・ドゥやスターフライヤーなど、ANAと同じ情報システムを使用している傘下の航空会社にも及んだ。
ANAは、同システムについて、不具合発生時の対応として、同じ構成のデータベースをふたつ並列して持ち、その一方に不具合が生じた場合には他方に運用を切り替えて対応するという「ミラーリング」の手法を導入していた。しかし、その両方がダウンしたとのことである。
とはいえ、不具合発生から55分の時点から復旧を開始できたことは大きな意義がある。
大規模障害は20年間で5回目

今回を含め、ANAは2003(平成15)年以来、大きなシステム障害を5回発生させている。ただ、これまでの4回の障害発生時と比べ、影響を受けた人数は
・2003年:約10万人
・2007年:約9.1万人
・2008年:約7万人
・2016年:約12.5万人
と圧倒的に少ない。
日頃の不具合発生を想定した訓練が功を奏した。つまり、事業継続計画(BCP)がうまく機能したのだ。
しかし、それでも2万人を超える人たちが影響を受けた事実は重く見なければならない。今回の事態は、ハードウエアに問題がなく、ソフトウエアの問題だとANAは発表している。ソフトウエアは何か問題が起こったとき、ハードウエア以上に原因究明が難しい。
システムのどこでどのような問題が起こっているかは、そのシステムの開発者、プログラマー自身にもわからないことが多く、極めてこの分野に精通している人でないと解決できない。
そして、そうした人材の存在は数が限られている。このことが現在、国家的安全保障の問題となっている。高度な情報システムのセキュリティー管理は極めて難しいということを改めて実感させられる事態となった。