JAL「タイムセール」のサーバーダウンに見る、ネット依存社会の現実 今こそ問われる航空会社の自律的経営とは
問われる経営の自律性

航空会社にとって、全業務領域のなかで特に
「営業活動のインターネット化」
は死活の問題だった。旅行代理店に対する航空券の取扱手数料の支払いは、航空会社にとって大きなコストであり、何よりも旅行代理店を通した販売は、膨大な流通コストとなっていた。ときには、航空会社と旅行会社との間の「密約」が国税局によって問題視されたこともある。
インターネットで、最終利用者、特に大口顧客である大企業への直接販売が可能になったことにより、航空会社は販売戦略を自律的に行えるようになった。それが低料金化にもつながった。また、インターネットを通じた広報活動や販促活動についても、広告代理店との力関係にプラスの効果をもたらした。
しかし、インターネットでも容量の制約がある。この点に関しての警戒心が希薄になったのが今回のトラブルにつながったのではないかと、筆者は考える。さらに制約にとどまらず、ウェブサイトは往々にしてダウンする。システム障害やサイバーテロの脅威も念頭に置かなければならない。
いずれの場合も復旧には多くの時間、高度な専門的知識と経験が必要となる。また、対応できる人材も限られている。10年以上前のトラブルでも、いまだにその原因が解明されていないものもある。
搭乗手続きなどのシステム障害であれば、情報化が進む以前、「マニュアル時代」の社員がまだ残っていて、適切な対応をとれるかもしれない。しかし、今回のようなキャンペーンでは、システム障害に対して航空会社はほぼお手上げだったのではないか。
昨今の航空会社は情報技術に優れた人材を積極的に採用し、専門部署も立ち上げている。それでも情報技術を専門とする会社に比べれば人材の配置は限られており、対応力に限界があることは否めない。情報時代における経営の自律性が問われているのだ。