マツダはなぜ「ロータリーエンジン」の未来をあきらめないのか? という、一度は考えるべき根源的な問い
ラインアップから落とされた理由
2013年4月、マツダにとって最後の量産ロータリーエンジン搭載車だったマツダRX-8が販売を終了、最初のロータリーエンジン搭載車だったマツダ・コスモ以来絶えることなくラインアップされていたロータリーエンジンの系譜が途絶えることとなった。
ラインアップから落とさざるを得なかったのは、
・欧州市場において、ユーロ5に代表された当時最新の排ガス規制への適応が難しくなったこと
・他の地域においても、最終的にはユーロ5に準じた排ガス規制の導入が避けられなかったこと
・その結果、こうした規制の傾向はロータリーにとって優位に働くのはあり得ないだろうとの結論が導き出されたこと
が理由である。
それまで、マツダにとってロータリーエンジンとは自社が自動車メーカーとして世界市場で勝負する上での切り札的なエンジン技術だった。
ロータリーエンジンとは、1950年代半ばにドイツのNSUとエンジニアのフリッツ・ヴァンケルによって考案された回転運動のみで動力を生み出すメカニズムによる内燃機関だ。
シンプルで滑らかな動きで構成されたその基本的な構造こそ極めて合理的だった一方、量産実用化までには多くの技術的課題が残されており、少なくとも量産機として大成する上で最も貢献したのはマツダによる地道な技術革新だった。すなわちマツダにとってアイデンティティーそのものだったというわけである。
どの様な技術でもそうなのだが、それに関わるエンジニアや開発現場の士気を維持するためには技術に対する使命感的なモチベーションが重要となる。努力に対する成果こそは次の技術革新に対する大きな動機となるし、ひいてはそれがメーカーのカラーを生み出すバックグラウンドとなる。
クルマは純然たる実用商品である一方、多くの人はそこにメーカーの思いと熱意を期待し、それが最終的にはファンとしての購入動機となることに異論がある人は少ないと信じたい。