マツダはなぜ「ロータリーエンジン」の未来をあきらめないのか? という、一度は考えるべき根源的な問い
2013年4月、マツダにとって最後の量産ロータリーエンジン搭載車だったマツダRX-8が販売を終了。ロータリーエンジンの系譜が途絶えることとなった。
ロータリーエンジンのメリット
さらに、ロータリーエンジンには他のメリットも期待できた。
それは一般的なレシプロエンジンよりもマルチフューエル、すなわちガソリン以外の燃料にもより適していたという点である。実際、ロータリーエンジンは過去に水素燃料での実証実験で良い結果を残している。
水素が使えるということは、例えばLPガスやLNガスなどにも適しているということを意味していた。さらにバイオエタノールなどの使用も想定内であり、今後の社会状況の変化次第ではガソリンエンジンのレンジエクステンダーよりも使用燃料に対する多様性が期待できた。
今回、MX-30 e-SKYACTIV R-EVに採用されたレンジエクステンダー用のロータリーエンジンは排気量830ccの1ローターであり、ローター単体としての排気量は従来のものより大きいがエンジン全体のサイズは1ローターとあって非常にコンパクトにまとめられている。
ちなみにバッテリーを使い切ってしまった後の発電機駆動に要する燃費は7.6リッター/100kmと説明されており、これはリッター当たり13.2kmに相当する。ロータリーエンジンとしては立派な数字であるといって差し支えない。
マツダは今回のシリーズハイブリッド用レンジエクステンダーでロータリーエンジンの未来にひとつの可能性を見いだし、実際に量産モデルへの搭載という形での道筋を付けた。
これは揺るぎないアイデンティティーとしてのロータリーエンジンを今後も決して見捨てることはないというマツダのファン、そしてロータリーエンジンのファンに対する強いメッセージでもある。筆者(矢吹明紀、フリーランスモータージャーナリスト)はこういう企業の確固とした主張は高く評価したい。