52歳で年収362万円 「自動車整備士」という現代の不遇、全国で相次ぐ不正車検もまずは待遇向上からだ
全国で相次ぐ不正車検

人手不足が原因となる問題はすでに発生している。
2021年には、国土交通省の監査でATグループ(愛知県名古屋市)のネッツトヨタ愛知・プラザ豊橋による不正車検が発覚。その後も、トヨタ自動車直営ディーラーのトヨタモビリティ東京(東京都港区)のレクサス高輪で不正車検が行われていたことが明らかになった。
その後、トヨタ自動車(愛知県豊田市)が全国の系列ディーラーを対象に点検を実施した結果、
「12社13店舗」
で不正が発覚した。
明らかになった不正は
・ブレーキなどの検査の未実施
・ヘッドライト高度などの数値の改ざん
である。さらには、保安基準適合証を書類不備のままで交付していた事例も明らかになった。
結果、不正を行っていた店舗は道路運送車両法違反の疑いで家宅捜索を受け、プラザ豊橋とレクサス高輪は指定自動車整備事業事業の指定(保安基準適合証の交付ができる事業者)を取り消される処分を受けた。
日本の自動車業界をけん引するトヨタ自動車関連でも、このような事態が起きていることは極めて深刻だ。
2024年から新たな装置使った検査も

こうしたシステムが、検査や整備を複雑にし、現場にさらなる負担をかけているという指摘もある。2024年からは、新たに車載式故障診断装置を使った検査も実施される予定だ。
車両接近通報装置など、これは従来の検査方法では困難な電子機器の不具合を発見できるものとされているが、現場目線ではさらに検査項目が増加し、作業が複雑化することになる。安全装置が高度化することで、整備不良の発生する危険度がアップしてしまうのだ。
安全に関わる整備士の不足について、行政や業界ではどう捕らえているのか。
国土交通省では2022年5月に「自動車整備の高度化に対応する人材確保に係る検討WG」を設置し、人材確保の対策に取り組むことを発表しているが、まだ方針は示されていない。
誰もが当たり前に車を利用するなかで、整備士の人材不足は安全性を損なう最大の原因となる。使用する車の安全性を担保するための整備が十分に行われないなら、私たちは安心して車に乗ることができない。全ての車利用者は、彼らの置かれた境遇にもっと注意を払わなけなければならない。
今こそ、整備士が魅力的な職業になるための打開策が求められているのだ。