物流ドライバーの熟練テクを軽んじる荷主たち 「下請けの分際で」高齢社長の呆れた放言も、ホンネは「ドライバー様様」の痛々しい現実

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私たちの日常を支えている物流業界。そんな同業界で聞かれる、荷主からの「代わりはいくらでもいる」の言葉。このままでいいのか。

そう言うなら「やってみなはれ」

キャリアカー(画像:写真AC)
キャリアカー(画像:写真AC)

 そして2024年問題、いやそれ以前からドライバー不足は深刻だ。元大手企業のベテランドライバーに話を伺う。

「部材輸送なんて万年人手不足です。公道にしろ構内にしろ、例えば航空機の主翼とか誰でも運べるものではありません。ロケットの部品だってそう。経験はもちろん、素質もいる。ドライバーのなかには「こいつは超能力者か」という熟練もいる。いや、本来プロのドライバーって特殊輸送だろうと宅配だろうとそういうものですよ。1日100個とか200個とかを毎日、時間指定やら不在やらの中で配達する。これも「あんたたち、やってみなはれ」ですよ」

 ここではわかりやすく特殊輸送のなかでもさらに特殊な超大型貨物輸送の話をしてもらったが、2022年の韓国における物流ストライキでは荷主の大手自動車メーカーが営業から事務まで社員総出で完成車を工場から港に運ぶもギブアップ、労働条件の改善に応じることとなった。まさに

「あんたたち、やってみなはれ」

の結果である。確かに自動車を運ぶキャリアカーの運転技術はすごい。完成車そのものを運転するプロドライバーもまたすごい、神経も使うし自動車運搬船の積み付けドライバー(ギャング)の技術など神業だ。

 また鉄道車両の陸送もそうだろうか。筆者は実際に取材したことがあるが、カーブなど極めてゆっくり、かつ複数の誘導員や補助員がつくとはいえ「ドライバーは超能力者か」と思わされる。まるでいにしえの巨大兵器か壮大な神の儀式か、である。

 いや、普段から石油タンクローリー(筆者は子どものころから大好き、特にシェルと出光)を見ていても、狭い都市部に無理やり作ったようなガソリンスタンドにあり得ない角度からきっちり入り、きっちり出てゆく姿を見るにつけ「代わりなんていくらもいない」と思わされる。

「まあわかりやすく話しただけで、大型の特殊部材輸送なんて日本を代表する大企業が直でやってたりするから下請けうんぬんの話ばかりじゃありませんが、人手不足となるとその大企業だって話は別です。特に高卒が欲しい。仕事で運転するなら、まして特殊な輸送なら若いうちに覚えてもらいたい。でも今は高卒自体が少ないし、優秀な高卒の多くは公務員になるか大学に上がってしまう。だから就職希望で高卒は奪い合いです。工場も店舗も欲しがりますからね」

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