「人間は交通事故を必ず起こす」 こんな失敗前提に立った最先端の安全対策「ビジョンゼロ」をご存じか【連載】牧村和彦博士の移動×都市のDX最前線(9)
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「人間は交通事故を起こしてしまう」という事を前提に、たとえ起こったとしても「重傷化させないための道づくり」を推進する交通政策「ビジョンゼロ」を解説する。
歩行者関連の交通事故、36%減少
2020年6月には、6年間のビジョンゼロ政策の総括が発表されており、わが国の安全対策にも数多くの示唆を与えている。わずか6年で158カ所もの道路区間の改良、79カ所での左折巻き込み対策、34kmにも及ぶ車道と分離保護された自転車レーンの新設、465カ所のスクールゾーンでのスピードカメラの設置などを実施してきた。その結果、ビジョンゼロ政策前に比べ、歩行者関連の交通事故が36%も減少したそうだ。
さらに2022年からは、高齢者が多く暮らすエリアを対象に、優先的に安全に歩行できるよう「高齢歩行者対策ゾーン」を指定して、高齢社会に対応したビジョンゼロ政策を始めた。これは、ニューヨークの中で、高齢者人口割合に比べ高齢者に起因する交通事故が高いエリアを市が指定。一度の青信号で横断歩道が渡りづらい区間では、途中に島を造り、二段階で横断できるように交差点を小規模に改良、また、青信号の時間を長めに設定するなどした、高齢者目線に立った気の利いた対策だ。