車両はタクシー、でも名前は「コミュニティーバス」 なぜこんな珍現象が香川県で起きたのか?

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香川県高松市で、2022年12月からコミュニティーバスの試験運行が始まった。公共交通機関の失われた地域に登場した、新たな生活の足である。ところが、なんと使用しているのがバスではなくタクシーなのだ。

タクシー車両を使ったワケ

琴電円座駅(画像:(C)Google)
琴電円座駅(画像:(C)Google)

 しかし、これには理由がある。なぜなら需要が未知数だからだ。

 高松市は2019年から、市内西部の檀紙(だんし)地区でコミュニティータクシーの試験運行を実施している。同地区は、最寄りに鉄道駅が全くない交通空白地帯だった。

 そこで、高松市はJR端岡駅や琴電円座駅、スーパーマーケット、病院などを回るコミュニティータクシーを始めた。平日のみで曜日ごとに運行ルートを変更し、1日9便。運賃は中学生以上200円、子どもと障害者は100円に設定された。

 ただ残念ながら、試験運行は2022年3月で終了して本格運行は実施されなかった。利用者が全く伸びなかったのだ。しかも、タクシーを名乗っていたが10人乗りの大型車両を使用していた。利用者は少なく、運行費用もかさんだ。

 これを反映し、新たなコミュニティーバスはタクシー車両を使ってこぢんまりとスタートしたのだった。

国が共同経営を促すワケ

JR端岡駅(画像:(C)Google)
JR端岡駅(画像:(C)Google)

 小規模なコミュニティーバスの運営は今後必須になる。地方のバス会社の経営環境は著しく悪化しており、生活の足を守ることが困難なのだ。

 2017年時点で、三大都市圏を除く路線バス会社のうち、全体の約8割近くが赤字経営だった。公共交通のため容易に止められず、運転手に長時間勤務や低賃金を強いながらなんとか存続していた。

 現在、コロナ禍による乗客数の減少がさらに経営を圧迫している。そのため、国では法改正を実施し、バス会社の共同経営を可能にして存続を促す対応を取っている。

 かつてバス事業はもうかるビジネスであり、不当な料金設定を阻止するため、独占禁止法で「共同経営はカルテルにあたる」として禁じられてきた。それを、むしろ国が促す方向に転換しなければならないほどの状況になっているのだ。

 乗客数は伸びないにもかかわらず、高齢化社会の進展で自治体主導のコミュニティーバス導入の要望は増えている。いかに赤字を増やさず運行するか、という“さじ加減”が自治体には求められる。

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