トラックドライバーをタダ働きさせる「パレット回収」の闇! カネにならない物流こそ光を当てるべきだ
静脈物流の課題とは

動脈物流は生産や販売など、売り上げを生むための活動である。対して、静脈物流で運ばれるモノは、売り上げに直接的には貢献しないことがほとんどだ。売り上げがない、もしくはあってもごく少額であるため、利益はもちろん、輸送にかかるコストすら捻出できないケースが多い。
これが、静脈物流における最大の課題である。
例えば、パレットやかご台車、あるいは最近では通い箱(青果を始めとする生鮮食料品から海産物、部品などの工業製品まで幅広く使われている)と総称される使い回しが可能な輸送用の箱は、現在の物流には必須である。
これらは配達先で貨物を卸され、あるいは開梱(かいこん)された後、再び出荷元へ戻されることになる。これが厄介なのだ。
「僕ばっかりパレット回収を押し付けられるって…。どう考えても不公平ですよね」。ある運送会社で聞いた愚痴である。
配送をするたびにたまったパレット回収をすれば良いようなものだが、現実にはその後の配送、あるいは集荷の予定次第で、パレット回収ができないケースも少なくない。おのずと配達先には、空になったパレットがたまり、誰かがまとめて回収しに行くことになる。
問題は、パレット回収に対して、歩合がつかないことである。この運送会社では、運賃の数%を歩合としてトラックドライバーに支給していたが、パレット回収には歩合がつかない。理由は運賃がもらえないからである。
もちろん、パレット回収に運賃を支払う荷主もゼロではない。だが多くの荷主は、「配達のついでにパレット回収してくださいよ」と運送会社にお願いし、運送会社側もそれを了承する。こうして、パレット回収という静脈物流が、タダ働き化(あるいは燃料代も出ないような低運賃化)するわけだ。
燃料代や高速代をパレット回収に支出せざるをえない運送会社も災難だが、そのタダ働きを押し付けられるドライバーもかわいそうだ。こういった割に合わない仕事は、どうしても立場の弱い新人や、文句の言えないドライバーに偏りがちになる。
SDGsやESG経営・投資の文脈で考えたとき、ワンウェイの使い捨て輸送資材ではなく、パレットや通い箱といった何度も使える輸送資材を使うのは正しい。
だが、回収プロセスを適切に組み上げないと、無駄なコストを発生させたり、あるいは運送会社の犠牲行為を前提としたものになったりする。