米新車販売「トヨタ首位陥落」で露呈した、米国市場の特殊性 EV復権の波も中長期の覇者は誰だ
- キーワード :
- 自動車, トヨタ自動車, フォルクスワーゲン, ゼネラル・モータース
EVで復権を狙う米国の戦略

今後の北米自動車市場を予測するために、まず公的政策の動向を整理する。
自動車の排ガスによるスモッグに長年苦しんできたカリフォルニア州は、1962年に排ガス規制を導入~順次強化し、2022年8月には、2035年までに州内で販売されるすべての新車をゼロ排出車ZEVとする規制「Advanced Clean Cars II(ACCII)」を発表した。ZEVにはEV、燃料電池車FCVとプラグイン・ハイブリッド車PHVが含まれる。
ニューヨーク州、マサチューセッツ州、メイン州、コネチカット州、ロードアイランド州、ワシントン州、オレゴン州、ニュージャージー州、ハワイ州、ノースカロライナ州、ニューメキシコ州の11州もこの規制に同調する。
中国に次ぐ世界2位のCO2排出国である米国は、バイデン大統領が2022年1月の就任当日にパリ協定に復帰し、2022年6月にはクリーン・エネルギー関連機器の北米生産を拡大するための国防生産法を発動した。また、8月にはバッテリーを含めて、北米で生産されたEVとPHEVへの優遇策も含むインフレ抑制法も成立した。
しかし、北米生産の判定基準は厳しく、欧州や韓国企業のEVはほとんど対象外、日本車は米国生産のリーフ(日産)のみで、たとえ米国製でも対象となるには販売価格の制限があり、米国業界団体によると
「対象は3割程度」
との報道がある。
一方、補助金取得に対する累計販売台数の制限が撤廃されたことで、当面、最も恩恵を受けるのはテスラのモデル3とモデルY、と言われている。GMは、韓国LG化学と合弁で米国生産する(中国産の原料に頼る)バッテリーが国防生産法の基準を満たさなければ補助金対象とはならない。
ニューズウイーク誌は2023年1月10日号で「カリフォルニアがEVにかける夢」という特集記事を掲載し、
「ACCIIの実現にはEVの高価格、充電インフラ整備の遅れとアメリカ全体に忍び寄る不況が大きな障害となる」
とその困難さを指摘した。