鉄道は移動手段のみにあらず! 私鉄ビジネスモデルを編み出した阪急総帥「小林一三」をご存じか
小売業に参入

小林が編み出した私鉄のビジネルモデルは、百貨店という小売業にも及ぶ。現在、国内で営業している百貨店は
・呉服店ルーツ
・鉄道会社ルーツ
に大別される。鉄道会社をルーツとする百貨店はターミナル駅に併設し、鉄道の乗降客が利用するというビジネスモデルとなっている。
小林は梅田駅で多くの利用者が下車する様子を見て
「この乗客が駅でちょっとした買い物をするだけで莫大(ばくだい)な売り上げになる」
と直感。手始めに老舗百貨店の白木屋を誘致し、契約期間が満了した1925(大正14)年に阪急マーケットをオープンしている。
阪急マーケットが一定の成功を収めると、駅ビルを全面改装。1929(昭和4)年に阪急百貨店をオープンさせた。百貨店事業へと進出するにあたり、周囲からは「鉄道会社が小売店をやっても失敗する」とネガティブな意見が大勢を占めた。
そうした前評判を覆し、阪急百貨店は呉服店をルーツとする老舗百貨店と肩を並べる存在になっていく。阪急が成功したのをきっかけにして、私鉄各社もターミナル百貨店を続々とオープンさせていくことになった。
他社が阪急の手法を模倣したわけだが、小林は他社にも百貨店経営のアドバイスをするなど、ライバル企業へも協力を惜しむことはなかった。
小林を超える経営者は現れるか

2023年は、小林一三の生誕150年という節目にあたる。小林が創造した私鉄のビジネスモデルは、今も色あせていない。小林は
「鉄道は移動手段」
という固定概念にとらわれずに独創的なアイデアを次々と考え、実現させていった。
それらは一見すると鉄道と無関係のビジネスのようにも見えるが、しっかりと鉄道事業に寄与するビジネスとなり、経営の多角化に結びついた。そして、それは私鉄のビジネスを創造しただけではなく、私たちのライフスタイルにも深く根付いている。
小林は私鉄業界において不世出の経営者といえるが、鉄道業界は残念ながら小林を超える経営者を輩出していない。
今、鉄道各社は創業以来の危機を迎えている。その苦難を乗り越える、新たな鉄道ビジネスを創造できる鉄道人の登場を期待したい。