大江戸線「延伸」に暗雲か? 練馬区以遠は「事業性に課題あり」、背後にちらつく東京メトロ上場の影
都営大江戸線の延伸計画に暗雲が立ち込み始めている。その背景には一体何があるのか。
東京メトロ株の売却との微妙な関係

実は、延伸計画は
「東京地下鉄(東京メトロ)の完全民営化 = 株式売却(株式公開 = 上場)」
とも深く関わっている。
現在、同社の発行済み株式のうち国が約53.4%、都が約46.6%保有する“準国有鉄道”で、2004(平成16)年に帝都高速度交通営団から脱皮し特殊会社となったとき、できるだけ早く株を公開し完全民営化を図ることを法律で義務づけた。これに従い、交通審議会は当初2022年度の株売却を提唱したが、さまざまな理由から2027年度に先送りされただけに、まさに「待ったなし」の状況にある。
だが国と都は同床異夢の関係で、過半数の株を握る国は1円でも高く株を売ることを重視し、東京メトロの企業価値を下げるような大型投資を極力控えた。一方、都は「都営地下鉄」という別の鉄道組織を抱え、収益性よりも都民の足の確保と利便性アップを最優先にした政策を図っていて、大江戸線延伸計画もそのひとつである。
その一方、ふたつの地下鉄組織が併存するのは非効率と考え、一体化を長年模索している。だが巨額負債を抱えた都営地下鉄との統合には筆頭株主の国がすんなりと応じるはずもなく、都としては悩ましい限りと言ったところだ。
しかし、東京メトロ株売却の具体的なスキームは2022年の春にかなり煮詰まって行く。両者はともに株を半分ずつ手放すものの、大株主として引き続き君臨する内容で、恐らく双方合わせて全株式の「50.1%」を支配する絶対安定多数をもくろむと見られる。
売却額は同社の純資産額約6400億円を基準に、その半分の約3200億円が最低ラインと思われ、その半分、約1600億円ずつが少なくとも国と都にそれぞれ入る目算だ。ただし、国の売却益は全額東日本大震災の復興財源に回さなければならない。