大江戸線「延伸」に暗雲か? 練馬区以遠は「事業性に課題あり」、背後にちらつく東京メトロ上場の影

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都営大江戸線の延伸計画に暗雲が立ち込み始めている。その背景には一体何があるのか。

練馬区以遠は「事業性に課題あり」

東京23区における鉄道空白地域と夜間人口(画像:練馬区)
東京23区における鉄道空白地域と夜間人口(画像:練馬区)

 延伸計画は“首都圏鉄道新線の憲法”ともあだ名される「東京圏における今後の都市交通のあり方について」の2016年答申(国交大臣の諮問機関・交通政策審議会による)で掲げた24路線のひとつにも当然選ばれ、さらに都が優先して建設すべきと指定した都内6路線、つまり

・大江戸線延伸
・羽田空港アクセス線
・新空港線(蒲・蒲線)
・有楽町線延伸
・多摩都市モノレール(上北台~箱根ヶ崎)
・多摩都市モノレール(多摩センター~町田)

にも顔を連ねる。

 ところが多摩都市モノレールを除き、大江戸線延伸以外の三つの鉄道計画には国交省からゴーサインが出されているのだが、大江戸線延伸は

「費用対効果の悪さ」

から、審議会は「事業性に課題あり」との“ただし書き”をつけ、国交省も工事着手の許可をなかなか出さないでいる。練馬区間は70万人超という都内屈指の人口を誇る練馬区内を横断するため、利用者も十分見込め、地下に線路が走る道路の整備も進むなどお膳立てもかなり整っている。

人口激減予測の埼玉県西部

東所沢駅と大江戸線の位置関係(画像:(C)Google)
東所沢駅と大江戸線の位置関係(画像:(C)Google)

 問題は大泉学園町より先の埼玉区間で、埼玉県の人口予測では特に沿線エリアの同西部地域(所沢市、狭山市などで面積は練馬区の数倍)は、2020年の約77万人から2040年には

「約67万人」

と激減が予測される。このため沿線自治体はもっと開発を進め利用者数アップを図るなど対策を進めるべきと審議会は注文をつける。

 実際、2016年に審議会がまとめた延伸計画の費用対効果の試算では「練馬区間単独」の数字が最もよく、総建設費は900億円で費用便益比(コスト・ベネフィット・レシオ = B/C)は2.1~2.0、黒字になる時期を表す累積資金収支黒字転換年(黒転年)は19年後と見積もる。費用便益比は経費に対して、どれだけの便益(運賃など)が得られるかを数値化し、1.0以上が健全経営の目安となる。

 これに対して「埼玉区間単独」は総工事費は1400億円で、B/Cは0.9~0.8、黒転年は発散、つまり「いつか分からない」とし、全線一括の場合は総工事費2300億円、B/Cは1.2、黒転年33~36年と予測する。

 ただ2300億円は2016年の話で、最近の諸物価高騰を考えればその2倍以上、5000億円超も不思議ではない。このため、一部では

「まずは資金に余力のある都が単独で大泉学園町まで“都営大江戸線”の体で工事を進め、その先は第三セクターの鉄道会社の立て付けで推進するのが現実的では」

との声もあるが、推進協議会はあくまでも一括工事を目指している。

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