存続模索する「近江鉄道」 大阪直結の新線構想は起死回生策となりえるか?

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滋賀県東部を走る近江鉄道は、鉄道部門の赤字が続き、苦境に立っている。鉄路存続への模索の動きを解説する。

新線構想実現で「起死回生」なるか?

 ここまで、近江鉄道活性化への提案を交えつつも、厳しい現状を説明してきたが、実は、起死回生策ともいえる新線構想がある。貴生川駅で接続する信楽高原鉄道に乗り入れて、さらに信楽駅から約30kmの新線を建設して、京都府南部でJR片町線(学研都市線)と接続する仮称「びわこ京阪奈線」構想だ。

 近江鉄道の輸送密度は、2017年度の全線平均で1902人であり、内訳を見れば八日市~近江八幡間が4681人、本線の彦根~高宮間が3058人と、鉄道で存続させるか否かを判断する1つの目安である2000人は超えている。一方で、高宮~多賀大社間は598人、本線の米原~彦根間は692人であるから、非常に厳しい状況にある。

 信楽高原鉄道は、公有民営の上下分離経営を実施したことから、2020年3月の決算では約35万6000円の黒字になっていたが、コロナ禍の影響もあり、赤字に転落している。2020年度の輸送密度は、985人であった。

「びわこ京阪奈線」は、沿線の活性化および地域振興、交流軸の強化、震災時などの東海道本線に対するバイパス機能を提供する必要性を掲げ、滋賀県および関係自治体により、建設期成同盟が結成されている。

 仮に「びわこ京阪奈新線」が完成すると、東西方向の鉄道が脆弱(ぜいじゃく)な京都府南部では、近鉄京都線やJR奈良線と接続することで、利便性が向上する。さらに近江鉄道と信楽高原鉄道に大阪からの直通列車が運転されれば、大阪の通勤・通学圏になり、「幹線」に昇格する。

 その際は、かつての江若鉄道が国鉄に買収されて「湖西線」となったように、両鉄道がJR西日本に買収され、東海道本線のバイパス線として、旅客・貨物輸送ともに重要な路線になる可能性をも秘めている。近江鉄道の将来は、「びわこ京阪奈新線」に影響され、これが完成すると大きく飛躍するといえる。

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