存続模索する「近江鉄道」 大阪直結の新線構想は起死回生策となりえるか?
滋賀県東部を走る近江鉄道は、鉄道部門の赤字が続き、苦境に立っている。鉄路存続への模索の動きを解説する。
上下分離経営と財源確保
ここで、筆者(堀内重人、運輸評論家)から、厳しい現状を打開するための考え方をいくつか提示したい。
先ほど述べた通り、鉄道事業は赤字経営だが、沿線住民や学生などを対象に行ったアンケートでは、「安全で安定した輸送が担える鉄道が必要」という結果が出ている。事実、滋賀県では野洲川を超えると降雪が多いことや、近江鉄道と並行する国道8号線は慢性的に渋滞していることもあり、近江鉄道が廃止となれば、国道8号線の渋滞が激化するだけでなく、冬場にはスリップなどによる交通事故の多発が予想される。
それゆえ「公有民営」の上下分離経営を模索したことは正解であるが、それを実施するための「財源確保」が課題となる。筆者は財源として、ガソリン1L当たり1円、軽油1L当たり0.75円を課税したり、県庁や各自治体の駐車場を有料化したりして、自家用車の利用を減らすと同時に、その財源を近江鉄道のインフラの維持・管理や各自治体などの路線バスなどの維持に活用すべきだと考える。
また、滋賀県は車社会のため、近江鉄道の駅周辺は寂れていく傾向にある。これを回避するには、まずは駅周辺に病院や図書館、公民館などの公共施設や高齢者用の住宅を整備して、自家用車がなくても生活が可能な環境を整備する必要がある。
駅周辺へ人口を集中させる「コンパクトシティー」構想だ。それを実施するには、「公」が音頭を取ることはもちろんだが、金融機関の役割も重要になる。地元の滋賀銀行にも加わってもらわなければならない。駅周辺へ新規に住宅を建設する人に対し、滋賀銀行が低金利の住宅ローンを設定して、融資する形で駅周辺の人口を増やす必要がある。
幸いなことに、2022年11月19日のワークショップには、滋賀銀行の関係者も参加していた。